日本のミシュランシェフを採用することはできるのか?
グルメガイドブックは世界中に溢れていますが、世界でもっとも有名なガイドブックと言えば間違いなくミシュランガイドでしょう。
日本においても2007年にミシュランガイド東京が出版されて以来この国の飲食店におけるステイタスの一つになっており、なおかつ、ミシュランの星付き店が多い都市TOP5を調べてみると1位東京、2位パリ、3位京都、4位大阪、5位ニューヨークと、じつに3都市がランクインしているほどミシュラン側からの評価が高い国です。
そんな「日本のミシュランシェフをどうにか採用できないか」という海外の飲食店オーナーからの相談が絶えないこともあり、今回はミシュランシェフの採用について書いてみたいと思います。
1. 日本のミシュランシェフはどこにいる?
ミシュランガイドとは?
「ミシュランガイド」の初版は1900年8月にフランスで発行されました。自動車のタイヤメーカーであるミシュラン社が、「美味しい料理を求めて、遠くまでドライブしてほしい」と考えて出版されたのがミシュランガイドの始まりです。
その後、フランスの美食家たちの支持を受けたミシュランガイドは、星の数でお店を評価するようになり現在に至っています。現在公表されている星の基準は以下の通りです。
3つ星 | それを味わうために旅行する価値がある卓越した料理 |
2つ星 | きわめて美味であり遠回りをしてでも訪れる価値がある料理 |
1つ星 | その分野で特に美味しい料理 |
また、星以外で飲食店を評価する基準として、コストパフォーマンスの高い食事を提供する調査員おすすめのレストランとして1997年から「ビブグルマン」も登場し、リーズナブルなカジュアル店でもミシュランガイドに紹介されるようになったことで、より多くの飲食店や美食家たちが注目するガイドブックとして現在に至っています。
日本におけるミシュランガイドについて
日本においては2007年11月に「ミシュランガイド東京版2008」が発売され、その後、エリアは順次拡大されていきました。2021年11月現在、東京、大阪、京都の店舗については毎年ガイドブックが出版され、それ以外の都市については不定期でガイドブックが出版されています。
日本にミシュランシェフは何人いる?
では日本にミシュランシェフがどのくらいいると考えられるのでしょうか?
2021年のミシュランガイドとして発表されているエリアは東京、京都、大阪、岡山、北陸(富山、石川、福井)の5つで、それぞれのエリアの星獲得店数は以下の通りです。
3つ星 | 2つ星 | 1つ星 | 合計 | |
東京2021 | 12 | 42 | 158 | 212 |
京都2021 | 7 | 19 | 84 | 110 |
大阪2021 | 3 | 12 | 81 | 96 |
岡山2021 | 0 | 2 | 18 | 20 |
北陸2021 | 1 | 18 | 48 | 67 |
合計 | 23 | 93 | 389 | 505 |
2021年版のミシュランガイドにおいて、3つ星を獲得してるお店は23店舗、2つ星は93店舗、1つ星は389店舗で、合計は505店舗がミシュランの星獲得店です。日本に飲食店は約70万店あると言われていますので、じつに全体の0.1%に満たない確率です。
この中でミシュラン店の調理の核となるシェフが各店舗平均2~3名だと考えると、約1000名~1500名がミシュランシェフに該当します。日本の飲食業界に携わる人が約400万人いると言われていますので、この中のわずか0.03%程度がミシュランシェフに該当します。
ビブグルマン獲得店まで広げればもう少し母数は増えますが、それでもミシュランシェフは希少であり、採用は難しいといわざるをえません。
ミシュランシェフ採用にかかるコスト
ミシュランシェフを採用するためにお店に足繫く通い、なんとか転職を促そうとする方もいますが、あまりお薦めできません。ミシュランシェフという肩書きがある限り現在のお店を辞める事は考えにくく、たとえ転職を考えている場合でも、他店からも好条件でのオファーを誘いを受けている可能性もあり、そう簡単に引き抜くことはできません。また、お店に通うための交通費や飲食費もバカにはならず、成功するかどうか分からない採用活動に相当の投資を覚悟する必要があるからです。
2. 日本におけるレストランのレーティングについて
ミシュラン以外の指標
飲食店を評価する上で、ミシュランガイド掲載が分かりやすい指標のひとつであることは否定できないのですが、その指標にこだわった採用を進めると莫大な時間やコストがかかる可能性があります。日本にはミシュラン以外にもレストランをレーティングする指標がいくつもあります。
クチコミサイトによるレーティングやアワード(例: 食べログなど)、グルメ雑誌編集部が決める年間のレストランアワード(例: 東京ラーメンオブザイヤーなど)、グルメ評論家による評価、また同業のシェフたちによるクチコミの評価などが挙げられますが、それぞれ指標が異なっているため、評価されるお店は異なっているのが現実です。ミシュラン掲載店で働いていなくとも、日本の美食家や同業のシェフたちから評価されている素晴らしい日本人料理人は星の数ほどいるのです。
3. ミシュランシェフを採用しただけでは星獲得は難しい?
個人のスキルだけではお店の評価は上がらない
「ミシュランシェフを採用して、自分のお店もミシュラン掲載店にしたい」と夢見るオーナーの方も多いのですが、そもそもミシュランが評価しているのは、料理、お店の雰囲気、サービス、などの総合点であり、シェフ個人の力だけで星が獲得できるものではありません。運よく、ミシュランシェフ個人をヘッドハンティングできたとしても、前職と同じチーム、同じメニュー、同じサービスを作れるわけではないため、採用後に新しいお店作りの必要があるという点に関しては、他のシェフを採用した場合と変わりません。
チームビルディングに長けたシェフの採用を
ミシュラン掲載店を本気で目指すのであれば、短期的に結果を求めず、数年先を見据えたチームの育成が必要です。無理してミシュラン店からヘッドハンティングをするよりも、チームビルディングに長けたシェフやマネージャーを採用し、お店のチーム全体としてのサービス力を向上させていく事をお薦めします。
生え抜きの選手を上手く成長させて好成績を残すスポーツチームの監督が評価されるように、長年のチーム育成の結果、ミシュランや他のアワードを受賞できれば、チームを育成させた人事担当者やオーナーの評価にもつながります。ぜひ中長期的な視点での採用活動をご検討ください。
4. 採用に困ったら?
「日本人寿司職人に向けた自分の店のアピールポイントが分からない」
「こんな人材採用したいのですが、どうやっていいかわからない」
「以前自分たちで採用活動して失敗したので、今回は人材会社で本当に良い寿司職人を見つけてほしい」
「日本語ができるスタッフがいないので、日本人採用業務を丸投げしたい」
など採用に困りごとがありましたら、和食エージェントにまでお気軽にご相談ください。