日本食レストランとしてのミシュランスターを獲得すること

星を獲得することがレストランやシェフにとって名誉とされる、美食家のバイブル、ミシュランガイド。2022年6月にMICHELIN Guide Dubaiが発売されましたが、この秋にはトロント版、イスタンブール版の発行も予定されており、どこのお店が星を獲得するか、大きな話題になりそうです。

1. ミシュランとは?

ミシュランといえば、今でこそミシュランガイドのイメージが強いですが、もともとは1889年にフランスで創設された自動車のタイヤメーカーです。1900年に自動車のドライバー向けに、ホテルやレストランの情報をまとめた赤い冊子を配ったことが、ミシュランガイドの始まりでした。その後、フランスの美食家たちの支持を受けたミシュランガイドは、星の数でお店を評価するようになり現在に至っています。

星の数の価値は以下の通りです。

星の数 星の価値
3 Stars  exceptional cuisine, worth a special journey
2 Stars  excellent cooking, worth a detour
1 Star  high quality cooking, worth a stop!

また、星以外で飲食店を評価する基準として、コストパフォーマンスの高い食事を提供する調査員おすすめのレストランとして1997年から「ビブグルマン」も登場し、リーズナブルなカジュアル店でもミシュランガイドに紹介されるようになりました。

2022年7月現在、約40カ国/地域のレストランがミシュランガイドに掲載されていますが、このうち、星やビブグルマンを取得しているレストランの数は以下の通りです。

Distinction 店舗数
3 Stars  137
2 Stars  480
1 Star  2,657
Bib Gourmand  3,249

世界中にあまたあるレストランの中で星を獲得しているお店は約3,300店舗、ビブグルマンを獲得している店舗を合わせても6,500店舗程度しかありません。

2. ミシュランに掲載されている日本食レストラン

では、この6,500店舗の中でどのようなカテゴリーの日本食レストランが星を獲得しているのでしょうか。2022年7月時点で世界中のミシュランガイドの掲載店を料理のカテゴリー別に調べてみた結果が以下の通りです。

Cuisine 3 Stars 2 Stars 1 Star Bib Gourmand Total
Anago / Saltwater Eel 0 0 0 1 1
Curry 0 0 0 18 18
Fugu / Pufferfish 0 1 3 0 4
Izakaya 0 0 1 41 42
Japanese 15 44 226 74 359
Japanese Contemporary 0 3 6 3 12
Kushiage 0 0 0 7 7
Obanzai 0 0 0 2 2
Oden 0 0 3 8 11
Okinawa Cuisine 0 0 0 1 1
Okonomiyaki 0 0 0 8 8
Onigiri 0 0 0 1 1
Ramen 0 0 0 44 47
Shojin 0 1 0 1 2
Soba 0 0 4 39 43
Sukiyaki 0 0 2 0 2
Sushi 3 14 87 19 123
Tempura 0 5 19 4 28
Teppanyaki 0 0 1 2 3
Tonkatsu 0 0 0 17 17
Unagi / Freshwater Eel 0 0 2 10 12
Yakitori 0 0 10 19 29
Total 18 68 367 319 772

手動でひとつひとつ検索をかけているため、見逃しているカテゴリーがあるかもしれませんが、日本食レストランで星を獲得しているレストランは約450店舗、ビブグルマンを獲得している店舗は約320店舗がヒットしています。

3. ミシュラン獲得のプロセス

では、このようなお店はどのようにしてミシュランガイドに掲載されているのでしょうか。ミシュランの調査方法と星獲得までの流れについてご説明させて頂きます。

■ 誰が調査するのか?

調査員はミシュランの社員で、その多くはホテル学校の卒業生や5年から10年のレストラン・ホテル業界経験者と言われています。

■ 調査員はいつお店に来るのか?

原則、匿名で予約の上来店するので、いつ調査員が来るかは分かりません。また、名前で調査員だと分かると公平なサービスを受けることができなくなることがあるため、予約時には偽名を使うことも多いそうです。一般のお客様にまぎれて来店し、料理やサービスなどを評価し、立場を明かすことなくお店を去ることが多いのですが、お会計後にミシュランの調査員と明かし、キッチンを見せてほしいと言われることもあるようです。

ただ、素性を明かさなくても、他のお客様と様子が異なることから、なんとなく調査員だと分かったという店舗スタッフもいます。

■ ミシュランの評価方法は?

店内の様子やスタッフのサービスも評価対象にはなりますが、3つ星、2つ星、1つ星の評価は、原則料理のみで判断されるようです。

評価のポイントは以下の5点です。

素材の質

調理技術の高さと味付けの完成度

独創性

コストパフォーマンス

常に安定した料理全体の一貫性

常に安定した料理が提供されるかを確認するために複数の調査員がばらばらに来店することもあります。また、読者からのコメントも価値ある情報源となっており、それに基づいて調査員が再度、調査を行う場合もあります。そして、どのレストランを掲載するかは編集の段階で調査員が合議制で決定します。

なお、ミシュランの評価方法は毎年見直され、各都市や国ごとにも基準が異なると言われていますので、ミシュラン獲得店を真似て同じようなお店を作ったとしてもミシュランを獲得できるわけではありません。

ミシュランの調査や評価方法について詳しく知りたいという方は、元ミシュラン調査員の経験をもとに書かれた漫画、Emma Dreams of Stars: Inside the Gourmet Guideがおすすめです。

■ ミシュランに掲載された場合、いつ分かる?

国や地域によってルールは異なるようですが、一般的にミシュランガイドの出版前に、ガイドに掲載されるお店の料理人が招待されるレセプション・パーティーの招待状が届きます。ただ、会場で発表があるまでは、星がいくつかなどは教えてもらえないようです。

4. ミシュランを取ることの意義と取得後の売上

2018年3月に初めてミシュランガイドが発行された台北において、ミシュランの星を取得したレストランの売り上げ状況を、2019年4月に蘋果日報が報じています。この記事の内容によると、3つ星を取得したPALAIS DE CHINEホテルにあるフレンチレストランLE PALAISは、予約の電話が絶えなくなった結果、外国人観光客比率が10%から50%まで上昇し、1つ星を獲得した寿司レストランKITCHO では、売上が20~25%増加したそうです。

また、2015年12月1日にミシュランガイド東京2016にラーメンレストランとして初めてミシュラン一つ星を取得した東京のラーメンレストラン蔦では、ミシュラン発表後12月3日にはミシュラン掲載のラーメンを求める人たちで朝から行列ができはじめ、開店前の11時過ぎには100人以上の行列ができていた、と言われています。

ミシュランに掲載されることはお店にとって名誉であり、売上増も見込めるわけですが、一方でお店側からは、翌年のミシュランで星を落とさないように食材のグレードを上げたり、サービススタッフの教育に力を入れる分、コストも増えるという声もあがっています。

5. 店舗としてミシュラン星獲得を目指すなら、いつから準備が必要?

日本食レストラン関係者の方から、ミシュランの星を取得するために、いつから準備が必要なのかという質問をよく受けます。星を取得することだけがゴールであれば、お店のコンセプトやロケーションの選定、内装工事の段階から準備しておくのがベストでしょう。

ミシュランの基準は国ごとに異なりますので、同国内でミシュランを取得している他店を入念に調べ上げ、コンセプト、メニュー、サービス、内装などで共通点がないか調査してみると、その国のミシュランの基準が見えてくる可能性はあるかもしれません。ただ、ミシュランの取得は狙ってできるものではなく、あくまでもお客様に喜んでいただく料理やサービスを提供した積み重ねが、ミシュラン側に評価されているという点をご理解いただきたく思います。

例えば、飲食業界で地下のお店やトイレが男女共用のお店は星を取れないという噂がありましたが、長年ミシュランで3つ星を取得していた世界でもっとも有名な鮨店であるすきやばし次郎は、お店は地下にあり、そもそもが店内にトイレすらありませんでした。

もちろん、どういったお店が星を獲得しているか調べ、ミシュランの基準や傾向を理解することは素晴らしいことですが、それに振り回されることなく、自分たちでできる最高の料理やサービスを作り上げるのが結局星獲得への近道であると言えます。

6. 日本人シェフの採用はどのタイミングでどんな人を採用すべき?

日本食レストランでミシュランの星を獲得するために、オープン前にミシュラン掲載店の日本人シェフをヘッドハンティングしたほうがいいか、というご相談もよく受けますが、ここまで読んで頂いたみなさんならご理解頂けると思いますが、ミシュランの基準は国ごとに異なり、また、その年ごとにも基準が異なる可能性があるので、再現性があるわけではありません。

ミシュランシェフを採用したいお店は世界中に存在しており、他の店舗よりも高いお金を払って、オープン前にヘッドハンティングできたとしても、ミシュランシェフひとりだけで、星獲得を目指せるわけではないのです。

無理してヘッドハンティングするぐらいであれば、ミシュラン掲載店での勤務経験がないとしても、よい料理やサービスを提供した結果、ミシュランの星を取得できるようなお店を目指すというゴールを掲げ、チームを鼓舞できるような日本人シェフを採用すべきである、と言えます。

そして、よいチームビルディングの結果、星が獲得できたのであれば、それはお店やオーナー側の評価にもつながるはずです。ミシュランを目指すチームの一員として日本人シェフを採用したいとお考えの方は、ぜひ和食エージェントにお問い合わせください!

7. 採用に困ったら?

「日本人寿司職人に向けた自分の店のアピールポイントが分からない」
「こんな人材採用したいのですが、どうやっていいかわからない」
「以前自分たちで採用活動して失敗したので、今回は人材会社で本当に良い寿司職人を見つけてほしい」
「日本語ができるスタッフがいないので、日本人採用業務を丸投げしたい」

など採用に困りごとがありましたら、和食エージェントにまでお気軽にご相談ください。

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