ドイツで日本人料理人として働くための総合ガイド

ドイツで日本人料理人として働くことを検討中の方へ、本記事では求人市場の傾向から給与・待遇の相場ビザ制度生活情報文化的な注意点、さらには活躍する先輩料理人の事例日本食市場の展望まで、最新情報に基づき総合的に解説します。

30~40代の料理人を中心とした和食のプロフェッショナルの皆さんが、不安を解消し新天地でのキャリアを描けるよう、信頼できるデータや具体例​を交えつつお届けします。

1. ドイツの求人市場の傾向

日本食が人気の都市・エリア

ドイツ各地で日本食レストランの数は年々増加しており、2023年には国内の和食レストラン数が約1,220店に達したと報告されています​
なかでも日系企業が集まるデュッセルドルフは「リトル・トーキョー」と呼ばれるほど和食店や食材店が充実しており、海外で最も美味しい日本食が食べられる街との声もあります​
。首都ベルリンも近年日本食レストランが増加中で、寿司やラーメンはもちろん、抹茶スイーツが楽しめるカフェまで登場しています

この他にもミュンヘン(南ドイツの経済都市、和食の高級店が進出)、フランクフルト(金融都市、寿司店や居酒屋が多数)、ハンブルク(港町で寿司やラーメンが人気)など主要都市で和食人気が高まっています。また近年は地方都市にも和食店が広がり、例えばニーダーザクセン州のブランシュヴァイクのように日本人シェフを招聘する動きも見られます

需要のある和食ジャンル

ドイツ人にとって日本食といえばまず寿司が定番で、「スシ」「ワサビ」は今や世界共通語となりました
実際ドイツ各地で寿司店は比較的見つかり、健康志向からも根強い人気を誇ります。一方、
近年ブームとなっているのがラーメンです。フランス発のラーメンブームが波及し、本格的な味を提供する専門店がベルリンやデュッセルドルフをはじめ各地に登場しています​
さらに焼き鳥や丼物、居酒屋メニューなど
カジュアルな和食も徐々に浸透しつつあり、「日本文化が好き」という現地ファンがこれらディープな料理を求めて店に足を運ぶケースも増えています

加えて、ヴィーガン志向の高まりを背景に豆腐や味噌、おにぎりなどの和食材・料理も注目されています。
実際、ドイツの大学生協やスーパーで日本式おにぎりが販売され始めるなど、日本食の裾野が広がっています
。こうしたトレンドにより、寿司職人やラーメンシェフだけでなく、幅広い和食全般のスキルを持つ料理人への需要が高まっています。

求められるスキル・人材像

和食ブームに伴い求人ニーズも多様化していますが、共通して求められるのは本格的な調理スキル柔軟な対応力です。
寿司職人であれば魚の下処理から握り・巻きの技術、衛生知識が必須でしょうし、ラーメンシェフならスープを一から仕込み各種具材を調理できる力が求められます
。実際の求人でも「サーモンを捌き巻き寿司も握れる方」「自家製ラーメンスープを作れる方」など具体的な技術要件が示されています​
また
オールラウンドな和食調理への期待も高く、寿司だけでなく丼物や麺類まで提供する店も多いため幅広いメニューに対応できると有利です

さらに、海外の厨房では多国籍なスタッフと協働する場面もあるためチームで働く協調性コミュニケーション力も重要視されます
ドイツの和食レストラン増加に伴い、知識と技術を備えた有資格シェフなら「どこでもやっていける」と言われるほど活躍の場が広がっています

一方で、近年は非日本人シェフによる日本料理店も増えており、現地の料理人も高い技術で和食を提供する時代です
そのため日本人料理人として強みを発揮するには、伝統に裏打ちされた確かな腕前はもちろん、現地の嗜好に合わせた創意工夫やサービス力も求められていると言えるでしょう。

人材不足とチャンス

ドイツ全体を見ると、コロナ禍後の人手不足が深刻で飲食業界も慢性的な人材不足に陥っています。
2023年の独経済研究所(DIW)の調査では、ホテル・飲食業界において
求職者2.9万人に対し人手が4.4万人も不足していると報告されています​。この背景もあり、質の高い料理人であれば比較的採用されやすく、ビザ取得もしやすい環境が整いつつあります

実際、「日本人ならではの特殊技術」である寿司職人は各国で就労ビザが取得しやすい職種と言われます​。ドイツでも和食料理人は現地人材の雇用を脅かさず需要があるため、有能な人材には多くのチャンスがあるでしょう。人手不足という追い風を受け、「和食の魅力を世界に広げたい」という情熱ある料理人にとって、今まさにドイツへの挑戦は好機と言えます。

参考:
・blog.nipponip:ドイツの日本食事情 ドイツでどうやって広まっていった?
・young-germany:『ドイツでの働き方、日本での働き方 パート3』
・All About:ベルリンの日本食&ラーメン10選!ドイツの美味しい和食店
・海外飲食求人.com:ドイツにある人気和食店での料理長急募!語学スキルは不問です #560
・外車王:不動の人気はやはり「SUSHI」~ドイツの食事情 日本食編~
・MixB:【ヴッパータール・正社員シェフ】ラーメンチェーン店が事業拡大に向け緊急募集!
・courrier:日本でもお馴染みの「あの猫」は人手不足のドイツの飲食業界を救えるか? 
・東京すしアカデミー:海外就職情報 ドイツで働く

2. 給与・待遇の相場

給与水準(現地通貨と円換算)

ドイツの和食料理人の給与相場は職位や経験年数、勤務地によって幅があります。
一般的な調理スタッフの場合、
月給でおおよそ2,000~3,000ユーロ程度が一つの目安です(日本円で約30~45万円前後、1ユーロ=150円換算)。例えば、あるラーメン店チェーンの求人では月給2,300~3,000ユーロ(能力に応じて昇給あり)という提示がありました​

年収ベースでは300~400万円台からスタートし、料理長クラスや高級店のシェフになれば500万~600万円(約3.5万~4.5万ユーロ)以上も十分に可能です​。実際、地方都市ブランシュヴァイクの和食料理長ポジションでは年収約460万~558万円(※1€=164円換算)という条件が提示されていました
都市部の著名店で経験を積んだ寿司ヘッドシェフなどはこれ以上の高待遇も期待できます。

なお、ドイツでは税金と社会保険料が給与に含まれて控除されるため、手取り額は額面より少なくなります。
所得税は累進課税で独身者ほど負担が重く、加えて年金・医療などの社会保険料も差し引かれる結果、
手取りは額面の約6~8割程度になるケースが多いです(扶養家族の有無等で変動)。
例えば月給2,500ユーロの場合、独身であれば手取り約1,600~1,800ユーロほどになる可能性があります。
こうした点も考慮し、日本円換算の額面だけで判断せず
現地での生活コストと手取り収入のバランスを見ることが大切です。

チップ・インセンティブ

ドイツにもチップ(Trinkgeld)の習慣があり、レストランでは通常会計の5~10%程度を上乗せして渡すのがマナーとされています​
チップ文化のない日本人には戸惑う習慣ですが、「サービスへの感謝」としての心付けが一般的です。ドイツのレストランでは
受け取ったチップは基本的にスタッフ全員で分配するのが一般的で、接客担当だけでなく厨房や清掃スタッフも含め従業員全員で山分けするケースが多いようです

そのため、厨房で働く料理人もしっかりチップ分配の恩恵を受けられる職場が大半です(※店によって配分方法は異なる場合があります)。
額としては月に数百ユーロ程度のチップ収入が見込めることもあり、給与にプラスアルファのインセンティブと考えられます。

福利厚生・労働条件

ドイツの労働法規はしっかり整備されており、福利厚生や労働条件は概ね良好です。
フルタイム雇用であれば
健康保険(公的医療保険)や年金保険への加入が義務となり、保険料は会社と従業員で折半されます。求人票でも「健康保険あり」などと明記されることが多く、雇用主が加入手続きをサポートしてくれるのが通常です。例えば先述のラーメンチェーン求人では、就労ビザ申請や住民登録、健康保険加入、銀行口座開設など渡独後の各種手続きを会社が幅広く支援するとしています​。これは初めて海外で働く人にも安心できるポイントでしょう。

有給休暇については、法律上年間最低20日間(週5日労働の場合)の休暇取得が保障されています。
多くの企業ではこれ以上の休暇日数を設けており、日系企業だと25~30日という例も珍しくありません。
実際の求人例でも「年間20日以上の有給休暇」と記載があり
、少なくとも4週間程度の休みは確保されると考えてよいでしょう。
また週休については週5日勤務が基本
ですが、飲食業では繁忙期に週6日勤務となる場合もあります
その代わり閑散期にまとめて休暇を取る、あるいは勤務日数に応じて手当を支給するなどの調整が行われます。
労働時間は法律で1日8時間(週40時間)が原則で、これを超える残業には割増賃金か代休付与が必要です。
レストラン業界では状況により残業が発生しますが、日本のようなサービス残業の文化はなく、
時間外労働はきちんと記録・支払いされます。

また、まかない(無料の食事)が支給される職場も多く、求人でも「一日二食のまかない付き」といった待遇が示されています​。社員寮・住宅手当を用意する店舗も一部あり、遠方から赴任する場合は住居面でサポートが得られることもあります​
総じてドイツの雇用環境は法律に守られており、基本を押さえておけば安心して働けるでしょう。

参考:
・MixB:【ヴッパータール・正社員シェフ】ラーメンチェーン店が事業拡大に向け緊急募集!
・海外飲食求人.com:ドイツにある人気和食店での料理長急募!語学スキルは不問です #560
・まるみな@ゆるっとドイツ生活:なかなか慣れないチップ制度の話
・フランクフルト:レストランのチップって必要?どれくらい払う?

3. ドイツで料理人が取得可能なビザ制度

主な就労ビザの種類

ドイツで合法的に働くには**就労ビザ(労働許可付きの滞在許可)**が必要です。日本人料理人が取得し得るビザには以下のような種類があります。

就労ビザ(一般労働者向け)

現地企業からの雇用契約をもとに発給される最も一般的なビザです。
料理人の場合、レストランから正式な雇用契約書を受け取り、それをもって在外公館で申請します。近年ドイツは技能労働者の受け入れを拡大しており、他国と比べ比較的この就労ビザを取得しやすいと言われます
。日本食シェフのように「日本人ならではの特殊技能」は現地でも需要があるためビザ承認されやすい傾向があります

ワーキングホリデービザ

31歳以下の若い料理人であれば、最長1年間ドイツで就労可能なワーキングホリデー制度を利用できます
このビザでは雇用主を定めず就労・滞在できますので、まずドイツに渡って現地でレストランに勤め始めることも可能です。ただし期間が限られるため、その間に通常の就労ビザへの切り替えを図るケースが多いです​

EUブルーカード

大卒以上の高度人材向けビザで、一定以上の高年収(2024年時点で年収約4万5千ユーロ以上など)の職に就く場合に取得できます​
シェフ職でブルーカードの年収基準を満たすことは稀ですが、マネージャー職や大手企業のフードコンサルタント的な立場で適用される可能性はあります。ブルーカード取得者は永住権への早期切替や家族の就労無制限許可など優遇が大きいですが、通常の料理人にはハードルが高いビザです

フリーランスビザ

ドイツではフリーランス(個人事業主)として活動するためのビザもあります。
ケータリング専門や料理講師、期間限定のポップアップ店運営など、
特定プロジェクト単位で活動する料理人にはこのビザが選択肢となります。ただし収入計画や顧客予定を示す必要がありハードルは高めです。過去にはベルリンでポップアップ和食店を開く日本人シェフがフリーランスビザを取得した例もあります​。

この他、「滞在資格を持つ配偶者に帯同する場合の家族ビザ」や「現地の料理学校に通う学生ビザからの就労切替」など特殊なケースもありますが、一般的には現地雇用主のサポートによる就労ビザが王道です。

ビザ申請の流れとポイント

1.求人応募・採用決定

まずドイツの雇用主(レストラン等)から正式な内定を得ます。契約書(雇用条件、給与、期間など明記)が用意されたらビザ申請準備へ。

2.必要書類の準備

日本国内のドイツ大使館・領事館で労働ビザを申請します。必要書類はパスポート、写真、雇用契約書、履歴書、職務経歴書、資格証明(調理師免許や職業訓練修了証など)、「求人ポジションに適任でドイツ人では代替できない」ことを示す書類などです。料理人の場合、日本での調理師免許や和食経験が専門技能の証明になるでしょう。

3.ビザ面接・審査

提出書類にもとづき審査が行われます。ドイツは慢性的な人手不足ということもあり、近年は料理人のビザも比較的スムーズに下りる傾向です。ただし近年は移民増加により全体的な審査は厳格化しているため、一昔前のように誰でも簡単に通る状況ではありません。書類不備なく、雇用先もしっかりした店であることが重要です。

4.就労ビザ発給・渡独

ビザが下りればパスポートにビザシールが貼付されます。これで晴れて就労可能となり、ドイツへ入国します。現地到着後は2週間以内に住民登録を行い、その後外国人局にて最終的な滞在許可証(プラスチックカード)を受け取ります。最初は1~2年の有効期間で発給され、契約更新や在職中であれば延長可能、一定年数後には永住権申請も視野に入ります。

家族帯同については、就労ビザ保有者の配偶者や子ども家族再会ビザを申請することで一緒に渡独できます​
配偶者については原則A1レベルのドイツ語証明が求められますが、EUブルーカード保有者の場合は免除されます
。帯同家族も滞在許可を得れば就労や就学が可能(配偶者の就労制限なし)です。例えば日本で共働きのご夫婦なら、片方がシェフとして就労ビザ取得→配偶者が帯同ビザで渡独→現地で配偶者も就職、といったことができます。

ビザ取得事例とアドバイス

若手の場合、まずワーキングホリデーで渡独し現地経験を積んでから正式就労ビザに切り替えるルートが人気です。実際、ワーホリでベルリンに滞在し和食店で働いた後、3度目の挑戦で就労ビザを取得して独立した和食料理人の方もいます。ワーホリ中にドイツ語学校に通って語学力を上げ、その後正式雇用契約→ビザ申請という流れは王道パターンです。

30代以降の経験者の場合は、直接日本から就労ビザを申請するケースが一般的です。寿司アカデミー卒業生の中にも、卒業後すぐにドイツの寿司店からオファーを受け初渡独した方が多くいます​。このように日本での実績やコネクションがあればスムーズに海外就職が決まることもあります。

ビザ取得のポイントは「ドイツであなたを雇う明確な理由」を示すことです。和食シェフであること自体が特殊技能の証明になりますが、加えて調理師免許やこれまでの受賞歴・メディア掲載など実績があれば申請書類に盛り込みましょう。また近年は英語やドイツ語能力も審査のプラス要素となり得ます。法律上必須ではありませんが、面接で「現地で問題なくコミュニケーションできます」と示せれば印象が良くなります。

なお1990年代頃は、日本人がドイツに長期滞在する手段として日本料理店就職→ビザ取得という経路が当たり前でしたが​、現在では和食シェフの国籍も多様化し「日本人だから特別優遇」という時代ではなくなりつつあります。そのためビザがあるからといって安心せず、現地で価値を発揮できるよう語学やローカル適応力も磨いておくことをおすすめします。

参考:
・young-germany:3度目の挑戦でビザ取得。「海外で和食」が自分の道 赤澤真智子さん
・insglobal:ドイツでEUブルーカードで働く: 2024年の新ルール
・東京すしアカデミー:海外就職情報 ドイツで働くドイツの寿司店でヘッドシェフを務める岸本さん 成功するのは目的や信念がある人
・ドイツ連邦共和国大使館総領事館:家族帯同ビザについて(第三国の国籍を有する配偶者または子が同行する場合)

4. ドイツでの生活情報:物価・住居・食材調達など

初めて海外移住する料理人にとって、現地での生活環境は大いに気になるところでしょう。ここではドイツの物価水準や家賃相場、日本食材の入手性、交通事情、医療制度、治安など生活の基本情報を概観します。

物価・生活費の全体傾向

ドイツの物価水準は日本の約1.5倍以上とも言われ、特に外食費や交通費が高めです
ただし工夫次第で節約も可能で、食材はディスカウントスーパー(ALDIやLidlなど)を利用すれば比較的安価に揃います
。2022年以降はウクライナ情勢の影響でエネルギー価格が急騰し、食料品や光熱費も値上がりしています。一方で為替相場ではユーロ高・円安が進み、日本円換算だと割高に感じるでしょう。以下に主な費目の目安を挙げます。

家賃(住宅費)

住む都市や部屋の広さによって大きく異なりますが、都市部の単身者向けワンルーム(約50㎡)の家賃相場は月€1,000~1,800程度です​
例えばベルリンで€1,300前後、物価最高水準のミュンヘンでは€1,500~€2,300とさらに高額になります
。フランクフルトやハンブルクも€1,200超えが一般的です

一方、ライプツィヒなど東部の安価な都市では€700~€1,100程度と抑えられます
家賃を節約するには
WG(シェアハウス)に住む、あるいは郊外に住んで通勤する方法があります。郊外では同じ家賃でより広い物件に住める利点もあります。契約時にはWarmmiete(暖房・管理費込み家賃)Kaltmiete(純家賃)かを確認しましょう。Warmmiete表示なら基本的な水道光熱費込みの料金なので安心です。

食費

自炊中心か外食中心かで大きく変わります。
1人暮らしで自炊メインなら月€200~€400が目安で、2人なら€350~€700程度です。ディスカウントスーパーを活用すれば比較的安く済みますが、近年外食費がかなり高騰中で、レストランでの食事は一皿€15~20、飲み物込みで€25以上かかることも珍しくありません
主要な食品価格は、パン1個€1.5~3、牛乳1L約€1.1、卵1ダース€3.5~6.5、鶏肉1kg€8~10、ビール500mlで€1程度が2024年現在の相場です​
。日本と比べて肉類や乳製品は安く、魚介類や米・野菜はやや高めと言えます。

交通費

公共交通機関が発達しており、都市部なら車がなくても生活できます​
定期券は地域によりますが、たとえばベルリンの月額定期は約€80前後です
。しかし2023年より導入された全国版定期「ドイツチケット」(Deutschlandticket)は月額€49でドイツ全土のローカル電車・バスが乗り放題となり、交通費を大幅に抑えられます
タクシーは初乗り料金+距離制で、1kmあたり€2.5~3.5程度​
。ガソリン代は2024年現在€1.8/L前後と高めですが、そもそも都市部では駐車場事情も悪いため多くの人が公共交通+自転車を利用しています。会社によっては定期代の一部支給がある場合もありますが、基本は交通費も自己負担と考えておきましょう​(※確定申告で通勤費として税控除可能)。

医療費

ドイツは公的医療保険加入者であれば診察や治療費の自己負担はほぼありません。
保険証を提示すれば診療は無料(薬代の一部負担のみ)で受けられます。ただし歯科治療や特殊な診療は自己負担が発生することもあります。保険料は給与天引きされていますが、毎月
個人負担分はおよそ€120~€200(所得により変動)です。扶養家族がいれば追加保険料なしでカバーできるケースもあります。
医療水準は高く、大都市には日本語・英語対応可能な医師もいます。ただ予約制が基本で待ち時間が長いこともあるので、風邪薬や常備薬は日頃から備えておくとよいでしょう。

その他費用

光熱費・通信費は、電気・暖房代で月€100前後、インターネット+スマホで月€50程度が目安です。
娯楽費は人によりますが、ビールは安く映画館は高め、とメリハリがあります。交際費として友人と外食すれば一晩€30~€50はざらなので、日本食料理人同士で集まる際などは自炊パーティにするなど節約工夫もできます。

総じて単身者の生活費は月€1,800~€3,000程度、夫婦なら€2,500~€4,500程度が目安とされています
もちろん個々の生活スタイルで上下しますが、「稼いだユーロはユーロで使う」感覚で、日本円で考えると割高に感じても現地給与で十分賄えるケースが多いです。

住居探し・家賃事情

ドイツで住居を探す際は、日本人コミュニティの情報サイトや現地不動産サイト(ImmobilienScout24など)を活用できます。人気都市では住宅不足で競争率が高く、良い物件はすぐ埋まってしまうため早めの行動と妥協点の検討が必要です。物件検索では家賃に暖房費等込みかどうか(Warm/Kalt)デポジット(保証金、通常家賃の2~3ヶ月分)に留意しましょう。

多くの求人では現地到着後の住居探しを支援してくれます。例えば「部屋探しのお手伝いあり」「社員寮あり」といった形でサポートが提供されるケースもあります。短期的にはシェアハウス(WG)や日本人経営のゲストハウスに滞在し、現地に慣れてから腰を据えて物件契約する流れも一般的です。

契約後は市民局での住所登録(Anmeldung)が必要です。これは銀行口座開設やビザ手続きにも必須なので、入居後2週間以内を目安に済ませましょう。ドイツの住居は日本のように保証人文化がなく、代わりに入居者の収入証明や大家への自己PRレターが重視されます。料理人の場合、雇用契約書や給与明細を提示すれば信用度が上がり契約しやすくなります。

日本食材の入手性

「ドイツで日本の食材が手に入るか?」は料理人にとって重大な関心事でしょう。
結論から言えば、
大都市では日本食材の入手はかなり容易です。デュッセルドルフには松茸から納豆まで揃う日本食料品店が数軒あり、ベルリンやミュンヘン、フランクフルトにも日本食品専門店・アジアスーパーが存在します。醤油・味噌・米酢といった調味料は現地製造品も含めスーパーで簡単に購入可能になりました​。豆腐や寿司用海苔などもオーガニックショップで見かけるほど普及しています​

一方、生鮮の魚介類や和牛などは流通が限られるため入手が難しく割高です。寿司ネタ用の鮮魚は、在欧の日系食品卸や専門業者から取り寄せるのが一般的です。ドイツでは刺身用途の魚は一度冷凍処理する規則があるため、現地で調達する場合はそうした点にも注意が必要です。幸い近年は物流も発達し、週に数回は日系の魚屋が各都市に配送してくれるケースもあります。和牛についてはEU圏内で育成されたWagyu交雑種が手に入る場合もありますが非常に高価です。

調味料・乾物類は日本から取り寄せなくとも現地調達で概ね賄えます。価格は醤油1Lが€5~7、味噌500gで€4~6程度と日本より高めですが、給料水準を考えれば許容範囲でしょう。日本米(コシヒカリなど)も5kg€20前後で売られています。緑茶、豆板醤やごま油など中華系調味料もアジアンショップで充実しています。

つまり「高級食材以外の大半は現地で調達可能」と考えて問題ありません。どうしても欲しいもの(特殊な和菓子の材料や地方の珍味など)は、一時帰国の際に持ち込むか、日本の知人に国際郵送してもらう手もあります。ただし動植物検疫の規制で持ち込めないものもあるため注意しましょう。

交通・移動手段

ドイツは公共交通網が発達しており、特に都市部では電車・地下鉄(U-Bahn)・路面電車(Tram)・バスを駆使してほとんどの場所に行けます​
ベルリンやミュンヘンなどでは夜間運行のバスもあり、深夜帯の帰宅も可能です。日本人料理人の場合、勤務が深夜に及ぶことも考えられますが、都市によっては終電後はタクシー利用や自転車が必要な場合もあります。

前述のDeutschlandticket (€49/月)を使えば、地域を問わずローカル列車で自由に移動できるため非常に便利です。例えばデュッセルドルフ在住でケルンの店に出勤する、といった通勤もこのチケットで追加費用なく可能です(所要約30分)。長距離移動には高速鉄道ICEやICがありますが料金は割高で、早割を使っても片道€30~50はします。出張などでドイツ国内を移動する際は鉄道の他に長距離バス(FlixBus等、鉄道より安価)も選択肢です。

車の必要性については、地方で働く場合や荷物の運搬が多い職務でない限り、なくても大抵問題ありません。どうしても車が必要な場合、日本の運転免許証は渡独後6ヶ月間有効で、その後はドイツの運転免許に切替える必要があります。日本の免許からの書き換えは筆記・実技試験が必要(2023年現在)ですが、日本人の多い州では比較的スムーズに対応してもらえます​

日常の買い物は徒歩や自転車で済ませる人も多いです。自転車は安価で環境にも良く、日本ほど盗難の心配も高くありません(鍵は必要ですが)。都市部には整備された自転車道があり快適に移動できます。総じて公共交通+徒歩/自転車で事足りるケースが大半であり、生活インフラとしての交通の利便性は高いと言えます。

治安・安全面

ドイツは治安が良い国として知られ、暴力犯罪発生率も低く基本的に安心して暮らせます。夜間でも人通りの多い場所なら女性が一人で歩いても問題ない雰囲気です。ただし注意すべきはスリや置き引きで、特に観光客の多い地域や駅・空港ではバッグから目を離さないようにしましょう。日本人は警戒心が低いと思われ狙われやすいので、財布は前ポケットに入れる、リュックは体の前で持つ等の対策が有効です。

また、地域によって治安に差があります。大都市でも一部地区(例:ベルリンの深夜の公園周辺など)は薬物売買が行われていたり酔っぱらいが多かったりします。とはいえ日本の繁華街より危険というほどではありません。店の通勤帰りなどは同僚と乗り合わせる、タクシーを利用するなど臨機応変に安全を確保しましょう。

医療・緊急時については、ヨーロッパ標準の緊急番号110(警察)・112(救急)を覚えておけば万一のときも安心です。公的保険に加入していれば救急車も無料です。ただし救急車を呼ぶほどでない軽傷なら、自力で救急外来へ行く方が早いこともあります。ドイツでは患者の自己判断で行動することも求められる場面があり、日本のように至れり尽くせりではない点は留意が必要です。

その他、生活上の注意点としてはゴミの分別ルール(地域で細かく分類が異なる)、日曜・祝日はスーパーも閉まるため事前買い置きが必要、夏は夜10時でも明るく冬は夕方4時には暗くなる、といった気候・文化の違いがあります。総じて暮らしやすい国ですが、こうした違いも「郷に入っては郷に従え」の精神で楽しむつもりでいると良いでしょう。現地の習慣に徐々に慣れれば、きっとドイツでの生活は快適なものになるはずです。

参考:
・World Traveler Blog:【海外生活記】ドイツ生活に必要な生活費は?最新の物価状況は?ドイツでの1年間の生活費を公開します! 〜ケルン在住日本人ブログ
・note:ドイツの生活費はいくら?家賃・食費・交通費・生活費を解説
・YOUNG GERMANY:『ドイツでの働き方、日本での働き方 パート3』
・MixB:【ヴッパータール・正社員シェフ】ラーメンチェーン店が事業拡大に向け緊急募集!
・Blog nipponip:ドイツの日本食事情 ドイツでどうやって広まっていった?

5. 職場文化とコミュニケーション:知っておきたい文化的注意点

日本とは異なるドイツの職場文化や価値観についても理解を深めておくことが大切です。言語の問題、職場の習慣、働き方の違いなど、スムーズに現地に溶け込むポイントを押さえましょう。

言葉の壁と対策

ドイツで働くにあたりドイツ語力は高いに越したことはありませんが、和食レストランでは必ずしも必須ではありません。求人票でも「言語スキル:不要」と明記され、日本語しか話せなくても採用可としている例があります​。実際、日本人オーナーや日本人スタッフ中心の店では厨房内の会話は日本語というケースも多く、接客担当も日本語-ドイツ語バイリンガルがカバーしてくれることがあります。

しかし都市部の人気店やチェーン店では英語やドイツ語を求められる求人も増えているのが実情です。たとえば「簡単な英語でコミュニケーションができ、ドイツ語も話せれば尚良し」という条件を掲げたラーメンシェフ募集がありました。スタッフが多国籍化している職場では共通語として英語を使うことも多いため、最低限の英語力は備えておくと安心です。また、接客でお客様に料理説明をする場面などでは簡単なドイツ語フレーズを覚えておくと喜ばれます。「こんにちは」「ありがとう」「おいしいですか?」程度でも現地の方との交流がスムーズになるでしょう。

ドイツ人は総じて英語が堪能なので、英語ができれば生活上も職場でも大きな問題はありません。ただ長期的に住むならドイツ語習得を強くお勧めします。日常生活(行政手続きや病院など)ではドイツ語のみという場面も多く、言葉が分かればストレスが格段に減ります。幸い各都市に市民向け語学学校があり、安価で夜間コースも充実しています。週数回でも通えば着実に上達し、「郷に入っては郷の言葉」を楽しめるようになるでしょう。

職場の人間関係とコミュニケーション

ドイツの職場はフラットでオープンな人間関係が特徴です。上下関係に厳格な日本の厨房文化と比べると、シェフ同士も名前で呼び合い、意見をはっきり言う風通しの良さがあります。もちろん基本的な礼儀は必要ですが、「年功序列」よりも個人の専門性や意見が尊重される傾向です。新人でも良いアイデアがあれば遠慮なく提案してみましょう。ドイツ人は論理的に説明すれば納得してくれることが多いです。

またワークライフバランスを重視する文化も浸透しています。休日はしっかり休み家族と過ごす人が多く、趣味の時間も大切にします。日本のように仕事最優先で長時間労働するのが美徳という雰囲気はなく、営業時間外にだらだら残ることはほとんどありません。定時できっちり終わらせ、切り替えるメリハリは見習いたい点です。もちろん繁忙期や予約状況によって残業もありますが、その際は事前にきちんと予定を伝えるのがドイツ流です。スタッフのプライベートを尊重し、シフトもできるだけ希望を汲んで組まれます。

指示やフィードバックの出し方にも文化差があります。ドイツ人は良くても悪くても比較的ストレートに物を言います。日本的な「察してほしい」は通じにくいので、何かあれば明確に伝える方が互いのためです。逆に相手からはっきり意見を言われても個人攻撃と捉えず、「業務上必要な指摘」と割り切りましょう。ドイツでは問題点は隠さず話し合って改善する姿勢が一般的です。これは職人気質な厨房でも同様で、味や手順の改善点は忌憚なく議論されます。

労働観・職業観の違い

日本人は仕事に対し「献身する」「我慢して努力する」という意識が強いですが、ドイツ人は個人の生活や権利を守りつつ効率よく働く傾向があります。「職人魂」という意味では共通点もありますが、そのアプローチは異なるかもしれません。例えばドイツでは、「無理なものは無理」「できないことはできない」とはっきり言う勇気も必要です。無理を重ねて体調を崩しては元も子もありませんし、ドイツ人はそれを弱みとは捉えません。むしろセルフマネジメントができていると評価されます。

また、有給休暇を遠慮なく取得するのもドイツの常識です。夏には2~3週間まとめてバカンスを取る人も多く、もちろん事前に調整は要りますが、取れる権利はしっかり行使します。日本のように有給取得に罪悪感を覚える必要は全くありません。自分の休暇中は同僚がカバーし、逆に同僚が休むときは自分が助けるというお互い様の精神で成り立っています。料理人の世界でもこの考え方は徐々に広まっており、店を一定期間休業してシェフが休暇を取るケースも増えています。

上下関係について補足すると、ドイツ語には敬称(SieとDu)がありますが、職場では長く一緒に働くうちに上司とも「Du」(親しい二人称)で呼び合う間柄になることが多いです。一度Du関係になればフランクなやり取りができます。ただ最初は礼儀としてSieで話しかけ、相手からDuでいいよと言われたら切り替えると良いでしょう。日本語でも敬語・タメ口の距離感がありますが、その転換がもう少し明確に存在するイメージです。

多文化チームで働く心構え

ドイツの和食店では、日本人・ドイツ人のみならずアジア系や欧米各国出身のスタッフが働いていることも珍しくありません。実際、寿司店の多くはベトナムや中国出身の職人が握っていたりします。そうした多文化チームの中で働く際には、お互いのバックグラウンドの違いを理解し尊重する姿勢が大切です。

幸い、「日本食が好き!」という共通の情熱を持った仲間が集まっている場合が多いので、打ち解けるのに時間はかからないでしょう。言葉が拙くても日本の調理道具や食材の話題で盛り上がったり、まかないで各国料理を教え合ったりと、文化交流の楽しさを実感できるはずです。ドイツ人スタッフには日本のお土産(柿の種やキットカット抹茶味など)がウケますし、アジア系スタッフとは現地で恋しい食品情報を共有したりできます。

注意点としては、宗教や習慣への配慮です。例えばイスラム教徒の同僚がいれば豚肉を扱う際に気遣う、ベジタリアンのスタッフがいればまかないメニューに一品野菜料理を用意するなど、小さな配慮が信頼関係を築きます。またドイツは多様性を重んじる社会なので、差別的なジョークやステレオタイプな発言は厳禁です。「いただきます」「乾杯(Kampai)」など日本語を教えてあげると、逆にドイツ語の俗語などを教えてもらえたりして盛り上がります。

最後に、日本人として謙虚さと誠実さは最大の武器です。時間を守り、約束を守り、与えられた仕事に責任を持つ姿勢は必ず評価されます。ドイツではそれができない人も多いので、日本人のきめ細やかさは職場で信頼を得る大きなポイントです。「郷に従う」柔軟性を持ちつつ、日本人らしい良さも活かして、多文化の職場を楽しんでください。

参考:
・MixB:【ヴッパータール・正社員シェフ】ラーメンチェーン店が事業拡大に向け緊急募集!
・外車王SOKEN:不動の人気はやはり「SUSHI」~ドイツの食事情 日本食編~
・海外求人.com:ドイツにある人気和食店での料理長急募!語学スキルは不問です #560

6. ドイツで活躍する日本人料理人の事例

実際にドイツで活躍中の日本人料理人たちの事例をいくつかご紹介します。先輩たちの歩みは大きな励みになるでしょう。

ベルリンの日本料亭シェフ:渡 正穂さん

ベルリンにある日本料亭「893」では、日本人シェフの渡正穂さんが腕を振るっています
日本の調理師学校を卒業後、1995年に渡独。キッコーマン経営の日本食レストラン「大都会」に就職したのがきっかけでした​
。当時は3年契約のつもりで気軽に来たそうですが、そのままドイツの食文化に魅了され30年近くキャリアを重ねています。ミュンヘンの和食店でも経験を積み、ベルリンの新店立ち上げにも参加しました​

渡さん曰く、「日本料理レストランはこれだけ増えているので、知識と技術と調理師免許があればどこでもやっていける。ドイツで日本料理の需要はこれからも増え続ける」とのこと​
実際に現場を知るシェフから「チャンスは多い」との心強いメッセージです。渡さん自身、ドイツの規制で日本からの食材輸入が止められる現場に立ち会うなど苦労も経験していますが、その都度現地で代替食材を工夫し、
「本当においしい和食」を追求し続けています。ドイツ人にも出汁の繊細さや季節感を伝えるべく奮闘する日々とのことです。

ベルリンでポップアップ和食店を展開:赤澤 真智子さん

和食料理人の赤澤真智子さんは、ベルリンでフリーランスの和食シェフとして活躍する異色の存在です。
日本で和食修行を積んだ後、「海外で和食を広めたい」と2014年にワーキングホリデーでベルリンへ渡りました。最初は現地の和食店で働きながらビザ申請を試みましたが、最初の2回は不許可。それでも諦めずに経験を積み、3度目の挑戦で遂に就労ビザを取得した努力家です

現在は居酒屋風メニューのポップアップイベントやバーでの週末限定牛丼提供など、ユニークな形で和食を広めています
ベルリンの老舗バーで提供する牛丼は「現地のお客さんの大半が牛丼を知らない中、写真入りメニューなど工夫して1日10食出る人気になった」そうです​
。固定店舗を持たずフレキシブルに活動することで、自由度高く和食の魅力を発信しています。

赤澤さんのようにフリーの料理人として成功するには困難もありますが、「好きな和食で勝負したい」という強い意志と行動力があれば道が開ける好例と言えます。ビザ取得に3度挑戦した粘り強さは、多くの後進に勇気を与えてくれます。

デュッセルドルフのミシュラン星シェフ:長谷場 宜厚さん

日本食の評価が高まる中、ミシュランガイドで星を獲得する日本人シェフも登場しています。
デュッセルドルフの日本料理店「Nagaya」「Yoshi by Nagaya」を率いる
長谷場宜厚シェフはその代表例です。長谷場シェフは2009年にドイツで日本人初のミシュラン一つ星を獲得し、以降も星を維持し続けています。茶懐石の繊細さとモダンなプレゼンテーションを融合させた料理は現地で高い評価を受け、「日本食普及の親善大使」にも任命されました​。デュッセルドルフという日本食激戦区で頂点を極めた長谷場シェフの存在は、ドイツにおける和食の地位向上を象徴しています。

同じくフランクフルトの寿司職人・坂元三徳シェフやミュンヘンの小畠利雄シェフも農水省から日本食普及の親善大使に任命され、ドイツで日本料理の旗振り役として活躍中です。
彼らは現地で何十年も研鑽を積み、ドイツ人の舌に日本料理の真髄を届けています。その姿は、これから渡独する料理人にとって目標であり誇りと言えるでしょう。

その他の活躍エピソード

ラーメンチェーンを牽引するシェフ

ドルトムント発のラーメン店「IPPUDO」(仮名)では20年以上の経験を持つ日本人シェフが中心となり、ドイツ各地に直営・FC店舗を次々と展開しています
各店舗に日本から招かれたシェフが配属され、現地スタッフを指導しつつ本格ラーメンを提供中です。チェーン全体で日本人スタッフを募っており、未経験でも情熱があれば採用・育成するとのこと
。ラーメンブームの波に乗り、企業規模で日本食を広げるダイナミックな事例です。

現地人に和食指南

ある日本人女性シェフはベルリンで和食クッキングクラスを開催し人気を博しています。
味噌汁や巻き寿司の作り方を教える教室には毎回ドイツ人が集まり、自宅でも再現できる和食レシピを学んでいます。料理人が副業的にワークショップを開くことも可能で、和食文化の伝道師として新たな活躍の形となっています。

大手ホテルで和食料理長

ミュンヘンの高級ホテル内レストランに日本から招聘された料理長もいます。
現地スタッフにとって初めて接する和食の巨匠として注目され、ホテルの目玉として日本食レストランを繁盛させています。大手ならではの潤沢な食材調達網と設備のもと、創造的なコース料理を提供しており、地元紙にも取り上げられるほどの話題となっています。

このようにドイツ各地で多くの日本人料理人がそれぞれの形で和食を広め、評価を高める存在として頑張っています。SNSでは彼らの日常や料理写真が発信されているので、「#JapanischeKüche」「#SushiDeutschland」などで検索してみると現地で活躍する日本人シェフの生の声が見つかるかもしれません。

ぜひ先輩たちの足跡を参考に、自分ならではの活躍プランを描いてみてください。

参考:
・YOUNG GERMANY:『ドイツでの働き方、日本での働き方 パート3』3度目の挑戦でビザ取得。「海外で和食」が自分の道 赤澤真智子さん
・MixB:【ヴッパータール・正社員シェフ】ラーメンチェーン店が事業拡大に向け緊急募集!
・SUdesign:日本食普及の親善大使に任命:TOSHI Restaurant&Bar 小畠シェフ
・イスタンブルのキッチン:デュッセルドルフ旅行記 ミシュランレストランYOSHI by NAGAYA

7. ドイツにおける日本食市場の評価と今後の展望

最後に、ドイツにおける日本食の評価と市場動向、そして今後の展望についてまとめます。和食ブームは一過性ではなく、ここ数年のデータや専門家の見解からも持続的な成長が見込まれることがわかります。

日本食の現地評価とブームの背景

ドイツ人の日本食に対する評価は年々向上しています。
もはや寿司やラーメンは珍しい存在ではなく、「ヘルシーで多彩な料理」として広く認知され始めました。健康志向の人々からは
低脂肪で栄養バランスの良い和食が支持され​、ヴィーガンや宗教的戒律を持つ層にも受け入れられる料理として注目されています
例えば寿司は肉類を使わず野菜や魚で作れるため、ベジタリアンやハラールの観点でも選択肢に入ります​
。実際ドイツのスーパーでは巻き寿司(ツナやカニカマ入り)パックが€5~7程度で売られており、手軽なヘルシーフードとして定着しつつあります

また、2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも大きな転機となりました
これを契機に日本政府や企業が和食文化発信を強化し、各国で日本食イベントやPRが積極的に行われました。ドイツでも日本大使館主催の和食紹介行事やデパートでの寿司フェアなどが開催され、メディア露出も増えました。その結果「日本食=高級で特別」から「日本食=身近で魅力的」へイメージが変わりつつあります​

特筆すべきは、日本国外の日本食レストラン数がこの10年で3倍以上に増加した点です
農林水産省の調査によれば、2013年に約5万9千店だった海外和食店が2023年には約18万7千店と爆発的に増えました​
。ドイツでも前述のとおり1,220店に達し、この数字は今後も伸びる見込みです​。つまりドイツに限らず世界的に「和食ブーム」は進行中であり、その波に乗る形でドイツ市場も拡大しているのです。

市場拡大の可能性とトレンド

今後の市場拡大の鍵としていくつかのトレンドが考えられます。

ラーメン・居酒屋業態のさらなる進出

寿司は既に定番ですが、近年人気急上昇のラーメンや居酒屋スタイルはまだ供給が追いついていない状況です。
現地メディアでも「ラーメン特集」が組まれるなど注目が高まっており、各都市で行列のできるラーメン店が生まれています。餃子や唐揚げなど居酒屋メニューもドイツ人好みの味付けで提供すればヒットの余地があります​

今後は「寿司以外の和食」がどれだけ根付くかが市場拡大のポイントとなるでしょう。

高級和食・創作和食の台頭

経済的に豊かな層には、本格的な懐石料理や創作和食のニーズもあります。
実際ミシュラン星を持つ日本食店がいくつか存在し、予約困難な人気を博しています。フレンチやイタリアンのシェフが和の食材や技法を取り入れる例も増え、
和食と現地料理の融合が進んでいます。ベルリンでは日本の発酵技術に着想を得たソースを使う創作レストランが登場するなど、新たな試みも出ています。このようなハイブリッド業態は日本食市場をさらに広げる可能性があります。

外食以外の分野

日本食材そのものの市場も拡大しています。
例えばドイツの一般スーパーで豆腐や醤油が当たり前に棚に並び、家庭で和食を作る人も増えました
。レシピ本やYouTubeで日本料理を学ぶドイツ人もいます。惣菜コーナーに寿司や枝豆が並ぶ光景も出てきました
つまり「家で和食」という需要も潜在的に高まっています。料理人が関わる範囲でも、日本食デリバリー専門店の開業やテイクアウト専門寿司バーの展開など、新たなビジネスの余地があります。コロナ禍でデリバリーが定着した今、和食の宅配サービスは有望分野です。

人材面の展望

前述の通りドイツでは和食シェフの人材不足が懸念されています。
そのため、日本からの人材招へいは今後も続くでしょう。一方でドイツ人や他国出身のシェフも和食を習得し店を開く例が増えています​
。将来的には国籍問わず「和食マイスター」のような資格制度ができるかもしれません。日本政府も海外の和食人材認証を進めています。そうなれば日本人料理人も現地で資格取得して評価を見える化する、といったキャリアパスが考えられます。

料理人に期待される役割

市場が拡大・成熟するにつれ、料理人に求められる役割も広がります。
単に料理を作るだけでなく、
日本文化のアンバサダーとしての顔も持つようになるでしょう。ドイツ人客から寿司の正しい食べ方を質問されたり、日本酒の選び方を相談されることも増えます。そんな時、料理人自身が和食の背景文化やストーリーを語れると、お客様の満足度は一段と上がります。事実、「おもてなし」や「季節のしつらえ」など和食に息づく精神性が欧州で高く評価されつつあります​。料理人はその伝道師として、料理とともに文化も提供していく役割を期待されています。

また、将来的に持続可能性(サステナビリティ)への対応も不可避でしょう。地産地消の食材を使った和食、環境に配慮した調理法など、ヨーロッパでは環境意識の高い客層が増えています。精進料理や旬の野菜料理といった日本の知恵は、その文脈でも注目を浴びるはずです。料理人は伝統を守りつつ革新にも取り組み、現地のニーズに応える柔軟さが求められるでしょう。

展望まとめ


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ドイツにおける日本食市場の未来は明るい
と断言できます。
数字の上でも専門家の予測でも、和食人気は今後も増していく見通しです
。寿司・ラーメンという二大柱に加え、多様な和食が根付けば鬼に金棒。日本とドイツの架け橋となる料理人の活躍次第で、市場はいくらでも成長し得ます。

日本人料理人の皆さんには、ぜひ自信を持ってドイツに飛び込み、腕を振るっていただきたいと思います。
現地には既に先陣を切った仲間がたくさんおり、受け入れ土壌は整っています。今こそ海外に出るチャンス、と語る先輩もいます
。日本で培った技術と情熱をもってすれば、きっとドイツでも多くのファンを作れるでしょう。和食がさらにドイツの人々の生活に溶け込み、市場が拡大していく未来に向けて、皆さんの挑戦を心から応援します!

参考資料: ドイツにおける和食レストラン動向​、現地求人情報​、在独シェフのインタビュー、労働環境・チップ事情​などをもとに作成しました。本記事の情報は2024~2025年時点の最新動向に基づいていますが、実際に行動される際は最新の公式情報もご確認ください。ドイツでのご活躍を祈っております!

参考:
・外車王SOKEN:不動の人気はやはり「SUSHI」~ドイツの食事情 日本食編~
・SUdesign:日本食普及の親善大使に任命:TOSHI Restaurant&Bar 小畠シェフ
・Blog nipponip:ドイツの日本食事情 ドイツでどうやって広まっていった?
・CURRIER:ベルリンで「日本の発酵食品」が生まれ変わっている! ブームの要因は?
・リジェネ旅:オーガニックな菜食主義者が増え続けるドイツで受け入れられる日本食とは?
・ドイツ生活ノートまとめ:ドイツ人にウケること間違いなし!人気の和食家庭料理6選!(前半)
・YOUNG GERMANY:『ドイツでの働き方、日本での働き方 パート3』
・RedBull:日本食は世界一
・note:【無名人インタビュー】ドイツに移住した京都の和食料理人
・海外求人.com:ドイツにある人気和食店での料理長急募!語学スキルは不問です #560
・フランクフルト:レストランのチップって必要?どれくらい払う?

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