香港で働く和食シェフのための就職ガイド
1. 市場動向
香港は「美食の都」として知られ、外食文化が非常に発達しています。飲食店の数は約17,000店にも上り、そのうち日本食レストランは1,400店と、地元の広東料理店(約1,480店)に匹敵するほどです。日本食はファストフードから高級店まで幅広く浸透しており、吉野家やスシローといった日本のチェーン店も日常食として人気を博しています。近年も日本食レストランは増加傾向にあり、2025年には店舗数1,600店に達するとの予測もあります。こうした背景から、本格的な日本料理を提供できるシェフへの期待値が非常に高く、香港は特に寿司職人や割烹シェフなど腕に自信のある料理人にとって理想的なマーケットと言えるでしょう。
香港の日本食人気は、「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録された2013年以降さらに高まりました。地元客は新鮮な魚介を使った寿司や伝統的な和食の繊細さを高く評価しており、ミシュラン星付きの和食店も複数存在します。例えば、ミシュラン3つ星に輝いた日本料理店があるなど、日本人シェフの技が現地で正当に評価されています。また回転寿司チェーンやおにぎり専門店が次々と進出し、香港人の食生活に日本食が当たり前に溶け込んでいるのも特徴です。このような人気と市場規模を踏まえ、香港では和食シェフに活躍の場が豊富に用意されています。
2. 求人動向と求められるスキル

香港では寿司店から居酒屋、鉄板焼きまで様々な日本食業態の求人があります。中でも高級寿司店の需要は高く、豊富な寿司経験を持つ日本人板前は引く手あまたです。「おまかせ」スタイルの寿司や懐石を提供する店が増えており、ミシュラン星取得店や有名店での経歴を持つ寿司シェフは特に優遇される傾向にあります。一方、カジュアルな居酒屋業態や鍋・焼鳥など専門店も人気で、幅広い和食全般のスキルとメニュー開発力を兼ね備えたシェフが求められています。
具体的な求人例として、高級寿司店のヘッドシェフ募集では「日本での寿司調理経験10年以上」「高級店やミシュラン星付き店での勤務歴」などが条件に挙げられています。語学については、日本人シェフの場合は日本語のみでOKという求人も多く、英語や広東語は必須ではないケースが一般的です(話せれば尚可程度 )。香港の日本食レストランの厨房内は日本人スタッフ中心のことも多く、調理中のコミュニケーションは日本語で行える環境が整っています。ただし接客面では英語や中国語が使われるため、現地スタッフとの円滑な連携や将来的なキャリアアップを考えると英語力があるとプラスになるでしょう。
また、鉄板焼きシェフや天ぷら職人など専門調理技術を持つ人材も需要があります。高級ホテル内の和食店や富裕層向けレストランでは、目の前で調理パフォーマンスを行う鉄板焼きシェフ、日本酒に詳しい居酒屋料理長などが重宝されています。いずれの職種でもマネジメントスキルや衛生管理知識が重視されており、単に調理ができるだけでなく現地スタッフを指導できるリーダーシップが求められます。総じて香港の雇用主は「即戦力として厨房を任せられる経験豊富な人材」を探しているため、香港は本格和食の経験値を積んだ30~40代のシェフにとって腕試しの場として最適です。
3. 給与と福利厚生

香港の日本食シェフの給与水準は、同じ料理人でも日本国内より高めに設定されるケースが多く、世界的に見ても上位に入ります(シンガポール・香港の料理人平均年収は約500万~900万円 )。ポジション別のおおよその月給は以下の通りです。
料理長クラス
月給約HK$50,000(約¥82万~85万円)。高級店のヘッドシェフではHK$60,000超え(約¥100万円以上)となる例もあり、求人によってはHK$50k~70kという高待遇も見られます。このクラスでは住宅手当込みで年収1,000万円超の提示も珍しくありません。
副料理長・スーシェフクラス
月給約HK$30,000~40,000(約¥50万~66万円)。店舗の2番手ポジション相当で、経験年数や担当業務によって変動します。
一般的な和食シェフ(板前・調理スタッフクラス)
月給約HK$20,000~25,000(約¥33万~41万円)が目安です。寿司職人や焼鳥職人など専門ポジションではHK$30,000前後(約¥50万円弱)に達する場合もあります。
※参考: 現地香港人のキッチンスタッフ給与は、見習いシェフでHK$13,000程度、シニアシェフでもHK$15,000~20,000前後が一般的です。それに比べると日本人シェフには高めの給与が提示される傾向があり、経験とスキルに対してプレミアムが付いていることが分かります。
福利厚生面では、求人・雇用主によって差はありますが、以下のような待遇が一般的です。
賞与・手当
年末のダブルペイ(13ヶ月目の給与)や業績ボーナスが支給されることがあります。サービス料(チップ)の分配がある店舗もあり 、人気店ではチップ収入が月数千HKDに上ることもあります。
勤務日数
週休は1日が基本で 、月6日休み(=週休1日+月2回休)とする企業もあります。繁忙期以外で休暇をまとめて取得しやすいかは店舗次第ですが、有給休暇制度は法定どおり付与されます。
住宅関連
現地採用の場合、家賃補助が出るケースは少ないものの、住居探しを会社がサポートしてくれることがあります。高待遇のポジションでは住宅手当が含まれることもあります。住宅契約時の初期費用(敷金に相当するデポジット等)は通常本人負担ですが、契約手続き面は会社やエージェントが手伝ってくれることが多いです。
医療保険
多くの企業で民間医療保険への加入が提供されます。香港は医療費が高額なため、保険でカバーされるのは安心材料です。加えて就労ビザ保持者には公的医療も一部利用可能です。
その他サポート
渡航費用(航空券)の支給 、制服貸与、まかない(無料の社食)提供 などが一般的です。渡航時の空港出迎えや着任後の各種手続きサポートを行う企業もあります。
こうした待遇のおかげで、香港で働く日本人シェフの多くは日本国内より手取り収入が増え、かつ国際都市でのキャリアという付加価値も得ています。
4. 生活費と現地ライフスタイル

生活コストは香港ならではの高さがあります。中でも住居費は突出しており、香港島中心部で単身向け1ベッドルームを借りる場合、月HK$15,000~20,000程度は見込んでおいた方が良いでしょう。平均的な40㎡(約430平方フィート)の古いアパートでも月HK$16,000~18,000ほどの家賃が発生します。実際の相場として、中心エリアで1ベッドルーム月HK$17,000前後(約¥28万円)、郊外ならHK$12,000台(約¥21万円)からあります。家賃は立地や築年数によって大きく変動するため、予算に応じてエリア選定を工夫する必要があります。なお物件契約時は通常2ヶ月分のデポジット(保証金)と前家賃1ヶ月分が必要になる点も念頭に置いてください。
住宅事情としては、香港の住居は日本に比べ狭く感じられるでしょう。ワンルーム・1LDKでも日本のビジネスホテル程度の広さという例も珍しくありません。その代わり、治安は非常に良く市内のどこに住んでも安全です。また高層マンションが林立し、24時間体制の警備やプール・ジム付きのマンションも多く、利便性と快適さを兼ね備えた物件も探せます。日本人駐在員や現地採用者が多く住むエリアは、香港島の半山區(ミッドレベル)、銅鑼湾(コーズウェイベイ)、跑馬地(ハッピーバレー)など中心地に集中しています。
これらの地域には日本人向けサービスも充実しており、日本食材店や日本人医師のいるクリニックもあります。九龍側では紅磡(ホンハム)が日本人居住者の多い地区として知られ、最近では企業の九龍移転に伴い日本人コミュニティが増えているようです。また新界エリアには日本人学校(日本人子女向け学校)があり、家族帯同で引っ越す方は新界の住宅地(例: 西貢や沙田など)を選ぶケースもあります。新界は自然も多く家賃も安いため、子育て世帯には新界エリアが人気です。
食費や日用品費については、外食が多いと出費がかさみますが、ローカル食堂や大衆的なフードコートを利用すれば比較的安く抑えられます。一般的なローカルの食堂で昼食をとるとHK$50~80(約¥800~1,200)ほど、ミッドレンジのレストランで夕食なら1人HK$200~400(¥3,000~6,000)程度が目安です。また、日本の食材や調味料は専門スーパー(CitysuperやAEONなど)で入手可能ですが価格は割高で、例えば味噌500gがHK$30~60(¥450~900)と日本の数倍することもあります。幸い社食・まかないを提供してくれる飲食店も多いので、勤務日の食事負担は軽減できるでしょう。自炊を併用すれば食費はある程度コントロール可能です。
交通・通勤は非常に便利で、公共交通機関が隅々まで発達しています。主要な移動手段である地下鉄(MTR)は清潔で時間に正確、香港島と九龍、新界を網羅しています。加えて二階建てバスやミニバス、路面電車(トラム)も利用でき、市内であれば車が無くても困りません。公共交通料金は日本より安めで、地下鉄初乗りは数HK$程度、オクトパスカード(日本のSuicaに相当)一つで電車・バス・フェリー・タクシー等あらゆる支払いができてしまう手軽さがあります。通勤時間帯でも本数が多く、大抵の職場には30~60分圏内で通えるでしょう。なお勤務先によっては終電(だいたい深夜0時過ぎ)以降の退勤もありえますが、その際はタクシー利用(日本より安価)や深夜バスで対応可能です。
現地の生活スタイルは、都会的でスピーディーですが、日本人にとって馴染みやすい点も多いです。香港は英語が公用語の一つであり、英語が通じる場面が多いため中国語ができなくても日常生活に大きな支障はありません (実際、欧米からの駐在員も多く英語社会でもあります)。もちろん広東語を理解できれば更に生活の幅が広がりますが、まずは英語で十分対応できます。気候は通年を通して温暖・多湿で、夏は非常に蒸し暑く冬も最低気温10度前後と暖かい気候です。湿度が高いためカビ対策や強力なエアコンが必須になるなど日本との違いもありますが、寒さが苦手な方には過ごしやすい環境でしょう。
総じて、香港での生活は「家賃が高い代わりに収入も高い」という側面があります。現地の日本人コミュニティやサービスも整っているため、海外生活初心者でも比較的スムーズに適応できるはずです。仕事は忙しいですがオフにはグルメやレジャーも充実しており、アジアのハブ都市ならではの刺激的なライフスタイルを楽しめるでしょう。
5. ビザと就労許可

香港で長期就労するには就労ビザ(Employment as Professionals)の取得が必要です。日本人が現地企業に雇用される場合、雇用主がスポンサーとなって香港入境事務処(イミグレーション)にビザ申請を行います。一般就業政策(GEP)と呼ばれる審査基準に基づき、申請者の経歴や資格・技能が審査され 、現地人では代替できない専門性を持つことを証明する必要があります。シェフ職は学歴要件こそ問われませんが、10年以上の調理経験や調理師免許があるとビザ審査上有利になると言われています。近年、香港人シェフの台頭により外国人シェフのビザ取得は年々厳しくなっているため 、書類の準備や企業からの説得力ある説明が肝要です。
ビザ申請には雇用契約書、履歴書、職歴証明、日本の調理師免許証コピー(ある場合)、雇用主からの推薦状・事業計画書など多くの書類が必要です。審査期間は通常4~8週間ほどで、無事に許可が下りれば最初の就労ビザは2年間有効となります。その後も雇用が継続する限り、3年ごとに更新可能で、トータル7年以上香港に居住・就労すると永住権(Permanent ID)の申請資格が得られます。永住権を取得すれば以後はビザ無しで香港で働けるようになるため、長期的に香港でキャリアを築きたい方には大きなメリットです。
なお、30歳以下の方であればワーキングホリデー・ビザを利用して入国し、現地で働きながら就労ビザへの切り替えを狙う道もあります。ただし募集年齢層(20代後半~40代)を考えると、多くの方は企業スポンサーによる就労ビザ取得が唯一の選択肢となるでしょう。就労ビザ取得後は、配偶者や扶養子女に対して帯同家族ビザ(ディペンダントビザ)を申請できます。家族ビザで渡航した配偶者は香港で就労制限なく働けるため、将来的に夫婦で現地就業することも可能です。ビザ申請は煩雑に感じるかもしれませんが、求人企業やエージェントがしっかりサポートしてくれるので心配いりません。実際に香港で働く日本人シェフの多くがビザを順調に取得し、活躍しています。
6. 採用難易度と将来展望

採用難易度について、香港の日本食レストラン側から見ると優秀な日本人シェフの確保は容易ではないのが現状です。世界的な寿司ブームによる人材争奪や日本国内の職人不足もあり、各国で寿司職人の奪い合いが起きています。香港でも例外ではなく、信頼できる料理長クラスの人材は引き抜きオファーが舞い込みやすい状況です。そのため、求人企業は給与を含めた待遇改善やビザ手続きの全面支援など魅力的な条件を提示して人材確保に努めています。和食エージェントによれば「当社にも海外の寿司シェフ求人の依頼が多数寄せられている」とのことで、特に北米やシンガポールのような物価高地域では年収1,000万円超えも珍しくないそうです。香港も物価水準は高いものの、同様に経験豊富な寿司職人へのニーズは非常に旺盛です。
一方、求職者(日本人シェフ)の視点では、香港で働くハードルはビザさえクリアすればそれほど高くありません。日本国内で培ったスキルと実績があれば、面接でも高く評価されるでしょう。料理哲学や衛生意識など日本的なこだわりは香港の採用側にも伝わりやすく、「ぜひうちに来てほしい」というオファーに繋がりやすい環境です。強いて言えば語学力や海外経験がない点を不安に感じる方もいるかもしれませんが、前述の通り多くの店舗で日本語環境が整っていますし、海外就労自体がキャリアアップとして評価される側面もあります。むしろ重要なのは自分の強み(寿司が得意、炉端焼きが得意など)を明確に示すことであり、それができれば香港での活躍チャンスは十分に開けています。
将来展望として、香港の日本食市場は今後も堅調な成長が見込まれています。健康志向ブームや新しい食のトレンドに敏感な香港人にとって、和食は引き続き魅力的なジャンルだからです。実際、2023年から2025年にかけて日本食レストラン数は毎年約100店ペースで増加すると予想されており 、市場拡大に伴いシェフの求人も増える見通しです。特に高所得者層が多い香港では、高級おまかせ寿司や割烹がブームになっており、新規出店も相次いでいます。日本の著名シェフが香港に初の海外支店を構えるケースもあり(例:鮨さいとう香港進出など)、本場の味を求める声は根強いです。こうした動きは経験を積んだ日本人シェフにとって追い風であり、今後2~5年は引き続き好機が続くでしょう。
一方で、競合も増えることから“本物”だけが生き残る時代にもなります。店の乱立で一部では人材の取り合いが起き、待遇面でのインフレや人件費高騰も考えられます。そのため料理人側も常に研鑽を積み、新しいニーズ(例:プラントベースの和食 やフュージョン料理)に対応できる柔軟性が求められるでしょう。幸い、香港のお客様は良いものを見極める目を持っています。腕の確かなシェフであれば口コミやメディアで評判が立ち、長期的な成功を収めることができます。総括すると、香港市場の将来は明るく、実力ある和食シェフにとってキャリアアップと高収入を両立できる魅力的なフィールドであり続けるでしょう。
7. 和食エージェントが提供する価値

海外での就職となると不安も多いかもしれませんが、和食エージェントは日本人料理人の香港就職をトータルでサポートしています。当社はこれまで10カ国以上に50名以上の日本人シェフを橋渡ししてきた実績があり 、香港においても数多くの求人案件とマッチングを成功させてきました。そんな和食エージェントが提供する主なサービス・価値は以下の通りです。
求人マッチング
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求人ビザ取得・渡航サポート
就労ビザの申請書類準備から入国手続きまで、専門スタッフが丁寧にサポートします。特に取得が難しいと言われるシェフビザについても、過去多数の申請を支援しておりノウハウがあります。渡航前の各種段取り(航空券手配、隔離措置※コロナ禍の場合 等)も包括的にフォローするので安心です。
条件交渉・契約支援
言い出しにくい給与や待遇の交渉は、当社が求職者に代わって行います。香港の労働法や相場感を踏まえ、適正かつ有利な雇用条件を引き出せるよう努めます。また雇用契約書の内容確認についても日本語でサポートし、赴任前の不安を解消します。
現地定着フォロー
渡航後も、住居探しや銀行口座開設、携帯電話契約など生活面でのアドバイスを提供します。現地で困ったことや職場での悩みがあれば、いつでも日本語で相談できる窓口としてきめ細やかなアフターケアを行っています。異国でのチャレンジを孤独にさせないのが私たちのモットーです。
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