【シェフが知るべき】海外転職で見落としがちな英文契約書の重要ポイント解説
海外レストランで活躍するために必須!英語の雇用契約書・オファーレター完全チェックガイド
海外の一流レストランやホテルでシェフとしてのキャリアを築きたい。
そんな夢を持つ料理人にとって、海外転職は大きなチャンスです。しかし、言語や文化の壁に加え、雇用契約という重要なハードルが待ち構えています。
「契約書が英語で書かれていて、何にサインしているのか不安…」 「日本と海外では雇用慣行が違うと聞くけど、具体的に何を確認すべき?」
このような悩みを持つ料理人は少なくありません。
本記事では、海外で働くシェフが英文の雇用契約書やオファーレターを受け取ったとき、見落としがちな重要ポイントを徹底解説します。
料理の腕に自信があっても、契約内容の理解が不十分だと思わぬトラブルに発展することも。
あなたの海外キャリアを守るため、契約書の読み方をマスターしましょう。
目次
・雇用形態を正しく理解する (Employment Status)
・給与と報酬の細部をチェック (Salary & Compensation)
・勤務時間と休暇制度の確認 (Working Hours & Time Off)
・契約期間・更新・解雇条項の重要性 (Contract Term & Termination)
・ビザ・引っ越しサポートの詳細確認 (Visa & Relocation Support)
・競業避止・機密保持条項に要注意 (Non-Compete & Confidentiality)
・海外特有の雇用慣行を知る (At-Will Employment & Other Terms)
・契約書チェックリストと確認のポイント
・よくあるトラブル
・まとめ:安心して海外キッチンに立つために
1. 雇用形態を正しく理解する (Employment Status)
海外での雇用形態は日本と異なる部分も多いため、契約書の冒頭で確認すべき重要ポイントです。
雇用形態の種類と特徴
Full-Time Employee (正社員)
常勤雇用で期間の定めがないポジションです。
契約書には「permanent (恒常的)」「full-time (フルタイム)」などの表現で記載されることが一般的。基本的に週40時間程度の勤務で、福利厚生の対象となります。
Contract Employee / Fixed-Term Contract (契約社員・有期契約)
契約期間が明記された雇用形態です。
1年契約やプロジェクト単位の契約が多く、契約書には就労開始日と終了日(Contract Term)が必ず記載されます。契約満了後の更新 (renewal) の有無や条件も重要なチェックポイントです。
Probationary Period (試用期間)
正式採用前のお試し期間として設定されます。
日本より長めに設定される傾向があり、最長6ヶ月の試用期間も珍しくありません。
この期間中の待遇(給与や福利厚生の有無)や、試用期間終了後に自動的に本採用となるかどうかを確認しましょう。試用期間中は能力評価や職場適応度が測られ、期間内に解雇される可能性もあります。
2. 給与と報酬の細部をチェック (Salary & Compensation)
料理人にとって気になるのは当然ながら給与面。
海外では報酬体系が日本と大きく異なる場合があり、契約書の給与 (Compensation) 欄では基本給だけでなく、追加手当やボーナス、支払い方法などが詳細に定められています。
基本給と支払い条件
Base Salary (基本給)
基本給はボーナスや手当を除いた固定給部分を指します。
年収ベース(annual salary)や月額ベースで記載されることがほとんどです。例えば「Annual base salary of $50,000」は年間基本給を表し、チップやインセンティブは含まれません。必ず税引き前 (gross)か税引き後 (net) かを確認しましょう。
支払頻度 (Pay Frequency)
給与の支払頻度も契約書に明記されます。
「paid monthly (月次払い)」「bi-weekly (2週間ごと)」などの表現で示されます。特に米国企業では年俸額を示した上で「支払いは隔週で行う」等と記載されることが多いです。年俸制の場合、何回に分割して支払われるか(月1回×12ヶ月、隔週払いで年26回など)を確認してください。
レストラン業界特有の報酬
Tips (チップ) / Service Charge (サービス料)
レストラン業界特有の報酬として、チップ収入も重要な収入源となります。
契約書でチップの扱いがどう言及されているか確認しましょう。「Tip pooling (チップのプール制)」に関する記載や、キッチンスタッフへのサービス料分配があるかなども要チェックです。基本給にはチップは含まれないのが一般的です。
Allowances (手当)
基本給以外に支給される各種手当も確認しましょう。
住居手当 (housing allowance)、通勤手当 (transportation allowance)、食事手当 (meal allowance) など、海外で働く場合には特に住宅手当や赴任手当が付くこともあります。
Incentive / Bonus (インセンティブ・賞与)
業績や成果に応じて支払われる成果給やボーナスについても確認しましょう。
「performance bonus」や「annual incentive」などの記載を探してください。エグゼクティブシェフなどの場合、売上達成に対するボーナスが設定されることもあります。また会社の業績に応じて年次ボーナス(year-end bonus)が支給されるケースもあります。
雇用形態の種類と特徴
給与欄のチェックポイント
提示された金額だけでなく、通貨単位(米ドルか現地通貨か)、期間あたりの額(年収か月収か、時給か)、支払日(毎月何日払いか、隔週金曜払いなど)も見落とさないようにしましょう。また源泉徴収や社会保険料控除についても記載があれば把握しておくことが重要です。特に海外では税引前額が提示されることが多いため、手取り額がどの程度になるかも念頭に置いてください。
プロシェフの体験談:
「アメリカの高級レストランからオファーを受けたとき、年収$70,000と書かれていましたが、税金や保険料を引くと手取りは約$50,000でした。
また、チップ分配制度があることを事前に知らなかったため、実際の収入は予想と異なりました。契約前に必ず税金や控除額、チップ制度について確認することをお勧めします。」
3. 勤務時間と休暇制度の確認 (Working Hours & Time Off)
レストラン業界は独特の勤務形態があります。
特に海外では労働時間や休暇制度が日本と大きく異なるケースがほとんど。契約書の勤務条件欄で以下の点をしっかり確認しましょう。
勤務時間と残業
Working Hours (勤務時間)
勤務日あたり・週あたりの所定労働時間が記載されます。
例えば「40 hours per week (週40時間勤務)」「Schedule: 5 days on, 2 days off (週5日勤務で週2日休み)」などの表現があります。レストランではシフト制の場合も多く、シフトのパターンや勤務時間帯が明記されているか確認しましょう。
Overtime (残業)
時間外労働の扱いも重要です。
契約書に「Overtime will be compensated at X rate after 40 hours per week (週40時間超の残業はX倍の割増賃金)」のような記載があるか確認してください。職位によっては「みなし残業」や固定残業代込みの給与になっている場合もあります。
またマネージャークラスのシェフなどExempt(残業代支給対象外)と見なされる場合、残業代の支払いについて言及がないこともあります。
休日・休暇制度
Days Off & Holidays (休日・祝日)
週休や祝日休暇についての記載を確認しましょう。
「Two days off per week (週休2日)」「Rotating days off (ローテーションでの休み)」などの表現があるはずです。国によって法定休日や祝祭日の扱いが日本と大きく異なります。例えば、多くの海外企業ではお盆休みや年末年始の一斉休暇の概念はなく、代わりに夏季休暇やクリスマス休暇がある場合もあります。
Paid Vacation (Annual Leave, 有給休暇)
年次有給休暇の日数と取得条件も必ずチェックしましょう。
契約書に「Annual leave: 10 days」のような記載や、現地法に準拠する旨(「in accordance with labor law」等)の記載があるはずです。海外では有給休暇は初年度は少なめで勤続年数に応じて増える制度も一般的です。未消化休暇の繰越や買取についての規定も要注意です。
Sick Leave (病気休暇)
病気休暇に関する取り決めもチェックポイントの一つです。
国や企業によっては病気休暇の日数が独自に定められていたり、有給休暇と一体化して「Paid Time Off (PTO)」として総合的に扱われることもあります。特に海外では病気休暇は法律で義務付けられていない国もあるため、契約書での取り扱いを確認しておくことが大切です。
勤務条件欄のチェックポイント
勤務開始・終了時間や休憩時間、週当たり労働日数など基本条件を確認しましょう。
シフト勤務の場合は「平均して週40時間」「Operational needsに応じてシフト制」などの記載もあるため注意が必要です。また休暇の申請方法や取得条件(例:有給休暇は試用期間終了後から使用可能など)も確認しておきましょう。
料理長の経験:
「フランスのレストランで働いていた時、夏季のバカンス期間が約1ヶ月あることを知らず驚きました。
一方、日本のようにゴールデンウィークなどの連休は少なく、祝日出勤も珍しくありませんでした。国や地域によって休暇文化が大きく異なることを理解しておくと、心の準備ができます。」
4. 契約期間・更新・解雇条項の重要性 (Contract Term & Termination)
雇用の安定性に関わる重要な項目です。
海外では日本とは大きく異なる解雇慣行が存在するため、特に慎重にチェックする必要があります。
契約期間と更新
Contract Duration (契約期間) 有期契約の場合は契約の開始日と終了日が明記されます。
無期契約の場合でも「Employment is indefinite (雇用期間の定めなし)」や「permanent position」等と記載されることがあります。有期契約の場合、満了時の取扱い(自動更新か、更新には双方合意が必要か)についても確認しましょう。
更新条件がある場合は「This contract may be renewed upon mutual agreement x days prior to expiration (契約満了x日前の双方合意により更新)」といった条項があるはずです。
解雇・契約終了条項
Termination Clause (解雇・契約終了の条項)
契約解除や解雇に関する取り決めは特に重要です。以下の内容をしっかりチェックしましょう:
・Notice Period (解雇予告期間):
解雇や退職の際に必要な予告期間です。
「Termination with 2 weeks’ notice by either party (双方2週間前通知で解雇可能)」などと記載されます。自分から辞める場合にも同じ通知期間が求められるのが一般的です。
・Termination for Cause (正当理由解雇)とWithout Cause (無理由解雇):
「for cause」とは従業員の不正や重大な規律違反などを理由とする解雇、「without cause」とは理由を問わない解雇です。
契約書に「may be terminated at any time with or without cause」と書かれていれば、理由の有無に関わらず解雇され得ることを意味します。
・Severance Pay (退職金・解雇手当):
解雇時の手当についても確認しましょう。
国によっては一定期間働いた従業員を解雇する際に法定の退職手当の支払いが義務付けられる場合があります。契約書に「Upon termination without cause, the employee will receive X weeks of severance pay」等の記載があれば、その条件を読み取りましょう。
・Probationary Termination (試用期間中の解雇):
試用期間中は解雇がしやすくなっている場合が多いです。
「During probation, either party may terminate employment with 1 week notice」等の記載を確認しましょう。
解雇条項のチェックポイント
特に米国では多くの州で「雇用は基本的に自由に終了できる」という”At-Will”雇用の原則が適用されます。
契約書やオファーレターに「at-will employment」の文言がある場合は、雇用主が任意のタイミングで解雇できることを意味します。日本の雇用慣行と大きく異なる点ですので、この部分は特に注意して読み解きましょう。
現地シェフマネージャーのアドバイス:
「米国のレストランで働く場合、at-will雇用が一般的です。これは双方が自由に雇用関係を終了できることを意味しますが、実際には優秀なシェフは簡単に解雇されることはありません。むしろ、自分の技術とパフォーマンスを証明することで、キャリアアップのチャンスが広がることが多いです。」
5. ビザ・引っ越しサポートの詳細確認 (Visa & Relocation Support)
海外で合法的に働くには就労ビザが必須です。
また、渡航や引っ越しに伴う費用やサポートについても契約書で明確に確認しておくことが重要です。
ビザと就労許可
Visa Sponsorship / Work Permit Support (ビザスポンサー・就労許可サポート)
ビザのスポンサーシップとは、雇用主が従業員の就労ビザ取得を支援・保証することです。
契約書に「sponsor your work visa」や「assist in obtaining necessary work permit」等の記載があるか確認してください。ビザの種類(例:アメリカのH-1Bビザ、E-2ビザなど)やビザ申請費用の負担者について触れられている場合もあります。ビザスポンサーがなければ合法的に就労できないため、この点は必ず明確にしておきましょう。
引っ越し支援
Relocation Assistance (引っ越し支援)
海外赴任に伴う引っ越し費用やサポートについても確認が必要です。
「Relocation package」や「relocation assistance」という言葉があれば、詳細を確認しましょう。具体的には引っ越し代の補助、航空券代の支給、一時宿泊費や住居探しのサポート、引っ越し業者費用の負担などが含まれる場合があります。例えば「Employer will cover moving expenses up to $5,000 and provide temporary housing for 1 month」といった形で記載されます。
これらの支援がある場合、一定期間内に自己都合退職すると返還義務が生じるケースもあるので、「一定期間(例:1年)未満で辞めた場合はリロケーション費用を返済する」といった条項がないか確認しましょう。
その他のサポート
ビザ取得や引っ越し以外にも、現地での生活支援(現地語研修、銀行口座開設サポートなど)が提供されることもあります。
シェフの場合、渡航前の必要な医療検査や予防接種費用を負担してくれる場合もあるので、オファーレターの「Additional support」節も確認しましょう。
ビザ・引っ越し欄のチェックポイント
ビザスポンサーの有無は最重要事項です。記載が不明確な場合は必ず雇用主に確認してください。
また、家族帯同を考えている場合は家族のビザや引っ越し支援についても相談することをお勧めします。渡航日程の調整や、現地到着後の宿泊先確保についても契約上の取り決めを確認し、不明点は交渉・質問することが大切です。
海外転職経験者の声:
「オーストラリアのレストランに転職した際、ビザ申請は会社がサポートしてくれましたが、申請費用は自己負担だったのが想定外でした。
また、家族のビザについては当初の契約書に言及がなく、後から交渉することになりました。ビザ関連の費用と責任範囲は、契約前に明確にしておくべきだと痛感しました。」
6. 競業避止・機密保持条項に要注意 (Non-Compete & Confidentiality)
高級レストランやホテルでは、特別なレシピやノウハウを保護するために、競業避止義務や機密保持に関する厳しい条項が設けられることがあります。
これらの条項は退職後のキャリアにも影響する可能性があるため、慎重に検討する必要があります。
競業避止義務
Non-Compete Clause (競業避止条項)
競業避止義務とは、在職中あるいは退職後一定期間、競合する事業で働くことや競合する自己事業の立ち上げを禁止する取り決めです。
例えば「For one year after termination, the employee shall not work for any business that competes with the employer within a 50-mile radius (退職後1年間、雇用主と競合する事業で半径50マイル以内では働かない)」のように、期間や地域を限定して規定されます。
シェフの場合、特に著名レストランから別のレストランへの引き抜きや、独立開業による競合を防ぐためにこの条項が含まれることがあります。
ただし競業避止義務の有効性や範囲は国や州の法律によって制限される場合も多く、あまりに長期間・広範囲の制限は法的に無効となることもあります。
契約書でこの条項を見つけたら、適用範囲(期間・地域・禁止行為)を必ず確認し、必要に応じて交渉や専門家への相談も検討しましょう。
機密保持義務
Confidentiality Clause / Non-Disclosure Agreement (機密保持条項/NDA)
機密情報の保護に関する条項です。
レシピ、顧客リスト、経営戦略などの社内の秘密情報を社外に漏らさない義務を定めます。「During and after employment, the employee shall hold all confidential information in strict confidence… (在職中および退職後も機密情報を厳重に守る…)」という表現で記載されることが多いです。
シェフの場合、特別なレシピや調理法などが営業秘密となるケースもあるため、前職のレシピを新しい職場で使用することが禁じられるといった制限もあり得ます。
また自身のSNSへの投稿や口頭での情報共有も違反となり得る点に注意し、内容を十分理解した上で合意することが重要です。
Non-Solicitation (勧誘禁止条項)
退職後に同僚や顧客を自分の転職先に引き抜かない旨の条項も含まれることがあります。
「You shall not solicit or hire any employees of the Company for one year after leaving」等と記載されていれば該当します。
競業避止・機密保持条項のチェックポイント
これらの条項はあなたの将来のキャリア選択に制限を加える可能性があります。
特に厳しすぎる条件の場合は、署名前に交渉を試みるか、法律の専門家に相談することをお勧めします。特にエグゼクティブシェフやヘッドシェフなど、経営に関わる立場の場合は、これらの条項が一般的に厳格になる傾向がありますので注意が必要です。
有名レストランのヘッドシェフの経験談:
「ミシュランスターレストランを退職する際、1年間は同じ市内で競合するレストランで働けないという競業避止条項がありました。
次のキャリアステップを考える際に大きな制約となりましたが、地理的範囲が限定されていたため、別の都市での仕事を探すことで対応しました。契約書のこの部分は将来の選択肢に直接影響するので、特に慎重に検討することをお勧めします。」
7. 海外特有の雇用慣行を知る (At-Will Employment & Other Terms)
海外、特に欧米の雇用契約には、日本にはない独特の雇用慣行や法律用語が登場します。これらを理解しておくことで、思わぬ誤解や問題を避けることができます。
米国特有の雇用慣行
At-Will Employment (アットウィル雇用)
主に米国で一般的な雇用形態で、雇用主・従業員いずれも理由を提示することなくいつでも雇用関係を終了できるという原則です。
契約書に「Your employment with Company is at-will」と記載されていれば、雇用期間の保証がなく、解雇や退職が双方の裁量で可能であることを意味します。ただし「any reason (いかなる理由でも)」といっても、差別的解雇など違法な理由は除外されます。
この概念は日本にはなく、米国特有のものです。
At-will雇用下では契約期間の定めや解雇の正当性条項がなくても合法とされますが、従業員側もいつでも辞める自由があるということでもあります。
Equal Opportunity Employer (機会均等雇用者)
差別のない採用・雇用を掲げる旨の表明です。
人種・性別・宗教などによって採用や処遇で差別しないという企業の宣言で、法令遵守の一環として記載されています。
労働条件に関する用語
Exempt / Non-Exempt (時間外手当対象除外/対象)
米国の労働法で使われる区分です。
Exemptは時間外労働手当の支払い対象から除外される従業員で、一般に管理職や専門職・一定以上の給与水準の従業員が該当します。Non-Exemptはその反対で、残業代支払いの対象となります。
シェフ職では、エグゼクティブシェフやマネージャー職はExempt、それ以外の調理スタッフはNon-Exemptとされるケースが多いです。この区分により残業代支給の有無が変わるため、重要なチェックポイントとなります。
Independent Contractor (独立請負契約)
雇用契約ではなく業務委託契約に関する用語です。
もし契約書で「Contractor」として扱われている場合、従業員ではなく外部の請負人とみなされ、労働法上の保護や福利厚生が適用されないことに注意が必要です。シェフのケースではあまり一般的ではありませんが、期間限定のコンサルタントや出張シェフ契約の場合にこの形態を取ることもあります。
特有の用語理解のポイント
契約書中の法律用語や慣習的な表現に注意を払いましょう。
At-WillやExempt/Non-Exemptなど、日本になじみのない概念は出てきた時点で立ち止まり、その意味を確認することが大切です。
意味がわからない専門用語は調べるか質問することをお勧めします。
米国シェフ経験者の話:
「アメリカのレストランで働き始めたとき、週給制で隔週払いという支払い形態や、At-Will雇用という概念に戸惑いました。
また、ソースシェフとしての私はNon-Exemptだったため残業代が出ましたが、昇進してキッチンマネージャーになったらExemptになり、残業代がなくなりました。これらの違いを事前に理解しておくことで、給与や雇用条件についての誤解を避けることができます。」
8. 契約書チェックリストと確認のポイント
英語の雇用契約書やオファーレターを受け取ったら、以下のチェックリストを使って重要なポイントを見落とさないようにしましょう。
契約書確認の完全チェックリスト
雇用形態・試用期間の確認
・正社員か契約社員か
・契約期間の有無と長さ
・試用期間の長さとその間の条件
給与額と内訳の確認
・基本給(年間か月間か、通貨単位)
・ボーナス、チップ、各種手当の有無と条件
・給与の支払頻度と支払方法
・税金や社会保険料の控除
勤務時間・休日の条件
・1日の勤務時間と週の勤務日数
・シフトの有無と形態
・残業代の支給条件
・週休日数と祝日の扱い
・有給休暇の日数と病気休暇の有無
契約期間と終了条件
・契約の更新条件と手順
・解雇予告期間の長さ
・退職時の通知義務
・解雇理由や退職金の有無
・At-Will雇用の記載有無
ビザ・渡航サポート
・ビザ取得のサポート内容
・ビザ申請費用の負担者
・渡航費用や引っ越し費用の補助と条件
・家族のビザサポートの有無
競業避止や機密保持義務
・競業避止条項の期間と範囲
・機密情報の定義と保持義務
・競業避止・機密保持違反時の罰則
・独自レシピや技術の扱い
特有の用語の理解
・At-Will雇用の有無
・Exempt/Non-Exemptの区分
・契約書特有の法律用語の意味
記載内容の整合性チェック
・面接時や事前交渉の条件との一致
・給与額、役職、勤務地、勤務開始日の確認
・口頭約束の書面化確認
不明点の確認方法
契約書を読んで不明な点があれば、必ず質問しましょう。以下の方法が効果的です:
・採用担当者に直接質問する 具体的な質問をリストアップし、メールや面談で確認します。
・専門家に相談する 現地の労務に詳しい専門家や、海外で働く日本人シェフのコミュニティに相談することも有効です。
・同じ会社で働く人に話を聞く 可能であれば、すでにその会社で働いている方に実際の労働条件について聞いてみましょう。
経験豊富な料理長からのアドバイス:
「契約書を受け取ったらすぐに署名せず、少なくとも24時間は考える時間を取りましょう。その間に不明点をリストアップし、必要なら採用担当者に質問します。遠慮して質問しないと、後から大きな誤解が生じるケースをよく見てきました。特に初めての海外就労なら、日本語でも契約内容を説明してもらえるか確認するのも一つの方法です。」
9. よくあるトラブル
よくあるトラブル①給与手取り額が少ない(在職時)
その国の所得税がいくらになるのか、家賃など生活費がいくらになるのかを計算をしっかりせずに額面給与でオファーを受けてしまった。
その結果、思っていたより手残りが少なくなってしまい、生計が立てられなくなってしまった。
よくあるトラブル②住宅の質(在職時)
会社が提供してくれる住宅があまりに質が悪く、引越しを余儀なくされた。
ただし、その際は家賃を自己負担しなくてはならず、そうすると家賃高すぎて生活が成り立たなくなてしまった。
海外転職時の住宅環境の品質はその後の生活に大きく影響するため、部屋の写真をもらって確認するようにしましょう。
よくあるトラブル③(退職時)
お店を辞める時は、契約書の各条項に関するトラブルが多く出る傾向にあります。
1つは違約金で、ビザスポンサーなど採用に多額の費用をかけていることもあり、一定期間内に退職すると違約金の支払いが発生するケースです。
違約金の金額は会社によりますが、数十万円〜数百万円まで様々なケースがあります。
2つめは競業避止で、退職後に競合他社に転職することを禁止するケースです。
お店のノウハウ流出を防止するために課していることが多く、住み慣れた国で違うお店に転職したくてもできなくなる可能性があるため要確認です。
このように各国のさまざまなトラブル事例を蓄積、熟知している和食エージェントなら雇用契約書のレビューや相談もにも乗れますので、安心して転職することが可能です。
10. まとめ:安心して海外キッチンに立つために
海外でのシェフとしてのキャリアは、あなたの料理技術と創造性を新たな高みへと導く素晴らしい機会です。
しかし、その第一歩となる雇用契約を正しく理解することは、安心して海外のキッチンに立つための重要な前提条件となります。
ポイントを押さえて契約内容を理解する
この記事で解説した各ポイントを踏まえ、契約書の内容をしっかり理解した上で署名することが大切です。
特に海外では日本と異なる雇用慣行や法律が適用されるため、「常識」と思っていることが通用しないケースも少なくありません。
契約内容について疑問があれば、必ず採用担当者に質問し、納得できるまで確認しましょう。
大切なのは、あなた自身が契約内容を十分に理解し、その条件で働くことに合意できるかどうかを判断することです。
交渉の余地も視野に
条件に納得できない部分があれば、交渉することも検討しましょう。
特に給与、勤務時間、ビザサポート、引っ越し支援などは交渉可能な項目であることが多いです。あなたのスキルや経験に自信があれば、適切な根拠を示しながら交渉することで、より良い条件を引き出せる可能性があります。
海外転職はキャリアの転機に
海外の一流レストランやホテルで働く経験は、あなたのキャリアにとって大きな価値があります。
グローバルな視点、新しい料理技術、異なる食文化への理解を深めることで、あなた自身のシェフとしての可能性も広がるでしょう。
契約書の理解という最初のハードルを乗り越え、あなたの技術と情熱を世界に示す第一歩を踏み出してください。
正しい知識を身につけ、自信を持って海外のキッチンに立つことで、料理人としての新たなステージが開けるはずです。
グローバルシェフからのメッセージ:
「海外でシェフとして働き始めた当初は言葉や文化の壁に苦労しましたが、今では自分のキャリアで最も価値ある経験だったと感じています。契約書の細かい部分まで理解するのは面倒かもしれませんが、それが安心して仕事に集中するための土台となります。自分の権利と責任を理解した上で、思う存分料理の腕を振るえる環境を手に入れてください。」
おわりに
和食エージェントでは、海外で活躍したい日本人シェフの皆さんをサポートしています。
契約書の確認だけでなく、ビザ取得のアドバイスや現地での生活立ち上げ支援など、あなたの海外キャリアをトータルでバックアップします。
不安なことやご質問があれば、いつでも当社の専門スタッフにご相談ください。あなたの料理への情熱を世界で開花させるお手伝いをいたします。
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各国の法律や制度は変更される可能性があるため、最新情報の確認をお勧めします。